そして「子どもを送るので面談してほしい」と頼むと、女は中古サイトで学生服を購入。学生に変装し、女性宅を訪問し、女性を刺殺するという凶行に及んだ。犯行後、女性の遺体をキャリーケースに入れ、自身は女性の服に着替えるなど大胆で冷静な犯行に驚かされた。

 結局、容疑者の女を乗せたタクシーの運転手が深夜に若い女性が1人で大きな荷物を持って乗車し、その行き先が郊外の河川であったこと、車内に血痕が残されていたことで警察に通報、逮捕につながった。

 容疑者の女は幼少期に両親が離婚、祖父と長らく暮らしていたが、内向的な性格で学校生活を通じて友人はおらず、高校卒業後も進学や就職をすることなく引きこもりであったことが伝えられている。また、殺人に関連したサイトの検索を犯行の数カ月前から行い「殺人に関心があった」という供述もしている。自身の人生と比較して、学歴など境遇に恵まれた相手への嫉妬から家庭教師をターゲットにしたという見方も出ている。

 また、6月には大田(テジョン)市で、市内の高校に通う17歳の女子高生が同級生を殺害し逮捕された。被害者と容疑者はもともと親しい関係にあったが、昨年、被害者側が容疑者からの「いじめ」を学校に訴えてトラブルになっていた。学校の介入によりその後、二人は和解をし交流を続けていたとのことだが、最近になって再び二人に何らかのトラブルが生じ、被害者が容疑者に対して「絶交」を告げたことが犯行の引き金になったとみられている。

 どちらの容疑者も10代または20代前半の女性であったこと、内向的な性格でありながら殺人を犯し、さらには死体損壊を行うなど猟奇的な犯罪をしたことに世論はやはり強いショックを受けている。

韓国は事実上の死刑廃止国だが
「凶悪犯罪には死刑を復活させろ」の声も

 こうした凶悪事件が相次いだことを受け、韓国では犯罪の厳罰化を求める声が高まっている。現在、韓国では死刑が事実上停止され、最も重い刑は無期懲役である。

 韓国では1997年を最後に20年以上死刑執行がなく、「事実上の死刑廃止国」とされている。しかし最近は、上述のような凶悪事件が続いたこともあり、「生ぬるいことを言わず、やはり殺人犯は死刑にすべきだ」「死刑制度は必要だ」「来年の総選挙では、候補者たちはぜひ死刑の復活を公約に掲げてほしい」と言った意見をネット上で多く目にする。

 死刑制度については日本でも廃止論が出たり、あり方について議論が行われたりと、非常にデリケートな問題である。韓国でもこれらの事件をきっかけに、これまで以上に死刑についての議論が過熱しそうだ。