20代の男が14人を無差別に刺し負傷させた城南市の地下鉄西面駅に隣接するデパートを行きかう人々 20代の男が14人を無差別に刺し負傷させた城南市の地下鉄西面駅に隣接するデパートを行きかう人々 Photo:EPA=JIJI

今年の夏、韓国では国民を震撼(しんかん)させる無差別殺人事件が立て続けに起きている。地下鉄駅近くで刃物を振り回す、繁華街に車で突入して人をはね、さらにデパートに入って人を刺すという凶悪犯罪だ。その少し前には、若い女性による猟奇的殺人事件が起きたこともあって、「死刑制度を復活させろ」という意見も増えてきた。これらの事件の背景には、ある共通点と社会の課題があると筆者は指摘する。日本にも通じるその社会課題とは?(韓国在住ライター 田中美蘭)

今年、韓国ではこれまであまりなかったタイプの
凶悪犯罪が起きている

 7月下旬~8月上旬にかけて、ソウル市とその近郊で相次いで無差別襲撃事件が起こり、人々を震撼させている。いずれも、道行く人に突然凶器で襲いかかり、死傷者を出す惨事となった。また、猟奇的な殺人事件もこの数カ月で相次ぐなど、韓国社会に大きな不安を与えている。

 日本でもこのニュースはいち早く伝えられ、ニュースのコメント欄には「韓国ではこのような無差別殺人のような事件はあまり聞いたことがなかったのに、変わってきているのか」という書き込みが見られたが、確かに韓国では安全を軽視した大型事故はこれまでにも度々起こっているものの、街中で無差別に人が襲われるといった事件はこれまで記憶にない。

 しかし、それぞれの事件の背景を見ると、ある共通点と現代社会が抱えている問題点が浮かんでくるのである。