新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことで、コロナ禍によって大打撃を受けた業界・企業の業績の完全復活に対する期待が高まってきた。上場49社、15業界における月次の業績データをつぶさに見ると、企業の再起力において明暗がはっきりと分かれている。前年同期と比べた月次業績データの推移を基に、「嵐」から「快晴」まで6つの天気図で各社がいま置かれた状況を明らかにする連載「【月次版】業界天気図」。今回は、2023年6月度の旅行編だ。
近ツー社長引責辞任の影響は?
旅行の主要3社が発表した6月度の月次業績データは、以下の結果となった。
◯HIS(エイチ・アイ・エス)の旅行総取扱高
6月度:前年同月比355.1%(255.1%増)
◯近畿日本ツーリスト(KNT-CT ホールディングス〈HD〉)の取扱額実績
6月度:同134.1%(34.1%増)
◯阪急交通社(阪急阪神ホールディングス〈HD〉)の総取扱高
6月度:同191.7%(91.7%増)
3社とも前年実績を大幅に上回った。特に、HISが前年同月の3倍以上と、平時ではあり得ない増加率だ。コロナ禍で旅行業界は壊滅的な打撃を受けた。が、この1年ほどはそうした雰囲気から一変し、旅行支援政策の追い風や、訪日外国人(インバウンド)需要の復調などで、活気を取り戻している。
とはいえ、コロナ禍で業績が大幅に悪化したので、そこからの反動増による「見せかけの好業績」の可能性もある。そこで、時系列で数字の推移を見ながら、コロナ前の水準と比較した「真の回復度」を詳しく確認していこう。3社のうちコロナ前の水準まで回復している会社はどれくらいあるだろうか?
実は、コロナ前を上回った会社は1社もなかった。回復度80%を超える会社が1社あった一方、残る2社は60%台にとどまった。回復度で頭一つ抜け出した1社とは、どこだろうか? 当ててみてほしい。
また、「海外旅行」「国内旅行」「訪日旅行」と事業別に深掘りすると、意外な結果が判明した。なんと、会社によっては回復どころかコロナ前から大幅に成長させている事業があったのだ。
最後に、近畿日本ツーリストの不祥事の影響についても触れたい。コロナ関連委託事業で人件費を偽って費用を過大請求していた問題で、同社の高浦雅彦社長が引責辞任する(8月31日付け)ことになった。この件は今後、同社の業績にどのような影響を及ぼすだろうか?