マイナンバー騒動が
「人為的ミス」で片付けられる怪しさ
マイナンバーカード問題が、岸田政権の存続の可能性まで揺さぶっています。
断っておきますが、私はマイナンバー制度一本化に基本的に賛成しています。これが全国民に普及すれば、時として差別につながりかねない戸籍制度などを撤廃できます。本人が住んでもいないところに知らない人の住民票が置かれたままになっているといったこともなくなるでしょう。何よりも、コロナ禍のときのような緊急事態に、国家的補償をする時間が短縮されるはずです。
しかし、残念ながら、現行のマイナンバーカード制度は一度白紙に戻すべきではないか、と考えます。
毎日のように、誤作動や間違った紐付けのケースが報道されます。カード擁護論者は、「そんなことは大きなシステムでは0.01%以下の誤差の範囲内」などと弁明しますが、果たしてそうなのでしょうか。
私はこうしたシステムの事故が人為的ミスとして片づけられることが、まず怪しいと思います。人為的ミスが起こらないように設計することこそ、巨大システムの根本的な設計思想のはずだからです。
たとえば、前の人物がナンバーを打ち込んでいて途中で止めたところ、それが次の登録者のナンバーになってしまったといったミスを人為的ミスとしていますが、次の人物が登録作業に入った瞬間に、前の数字を自動的に消去するシステムにしておくことなどは、巨大システムの常識でしょう。
そして、一番政府に真剣に考えてほしいのは、マイナポイントなどの特典をつけても、なぜ国民の多数が参加しないのか、ということです。この事態こそ、政治家、官僚は胸に手を当てて深刻に考える必要があります。
私に言わせれば、国民が政府を信用していないからです。もし事故が起こって、個人情報が流出し、それによって自分の預金が盗まれたり、病気などの個人情報が漏れたりしたとき、政府はどんな補償をしてくれるのでしょうか。いや、その情報漏れが政府によって起きたことを認めるのでしょうか。
なぜ、そんな疑問を持つかというと、政府や自治体で個人情報漏洩事件が起きても、官僚や政治家が処分を受けたり、逮捕されたりしたなどという話を聞いたことがないからです。