彼女のインスタグラムを見ると、確かにグラビアアイドルのような華やかな容姿で、ボディラインが強調された衣装や際どい水着姿も多い。だからと言って彼女の過去やファッションをひとくくりにして、「被害に遭っても当然」と言ったり、叩いたりするのはやはり間違っている。また、彼女にとって露出度の高いファッションは、本人が主張する通りセールスポイントである。性犯罪行為や批判に屈する形でスタイルを変えることはしないであろう。

 今回のような性被害でなくとも、最近はコンサートやフェスといったイベント会場で、観客によるモラルのない言動が問題視され、アーティスト側が苦言を呈す事態が度々起きている。日本ではこれまで、客側の良識を前提とした「性善説」がビジネスでもイベントでも基本だったが、それが成り立つのは既に難しくなってきているのかもしれない。

 また、セクハラをはじめとするハラスメント被害は、被害者が擁護されない現実があるのも事実である。性被害であれば前述のように「服装のせいだ」「隙があった」、イジメであれば「やられる方にも問題がある」などと、被害者側に非があるかのような意見が出ては被害者を傷つけ、追い詰めていく流れが常にある。

 こうした問題がネット上で拡散し続け、議論が過熱すればするほど、問題の本質が見失われ、被害者が傷つけられる二次被害や、性別や世代、さらには国籍の分断や相互嫌悪につながっている面があることは否めない。現に今回の騒動でも、彼女が韓国人であることや、彼女の過去の発言などをもとに「反日」や「歴史問題」とを結びつける投稿もSNS上に見られ、それに反論する側との間での対立が起こっている。

 スマホやSNSの浸透によって国内外や人との距離感は非常に近くなり、リアルタイムでさまざまな情報を得られるようになった。便利になった半面、不毛な議論や対立を生み、自分の意に反するものを叩いたり、排除しようとしたりする動きがあることには、毎度うんざりさせられる。

 彼女の過去や好き嫌いは抜きにして、やはり性加害は見過ごされてはならず、加害者は処罰されるべきである。この騒動がどのような方向で解決に向かっていくのか、見守りたいと思う。