もともと野党には世襲議員は多くありません。もちろん、世襲はダメといっても、日本国民には誰しも立候補できる権利があるので、その権利まで剥奪するわけにはいきません。ただ、三親等までの議員が地盤としていた選挙区から立候補できないというルールにすれば、世襲議員はなくなります(実際、多くの国では世襲制をそういう形で防止しています)。
小沢一郎が地元の選挙区を離れ
石原伸晃の選挙区で戦ったらどうか
世襲制反対を旗印に選挙をする以上、なるべく派手なアドバルーンが必要です。私は、アンケートでこう主張しました。
「民主党の大物世襲議員、小沢一郎が『世襲反対』の旗手となり、敢然と岩手の地元を離れ、当時大人気だった東京8区の石原慎太郎の息子・石原伸晃の選挙区で旗揚げしたらどうか」
これほどわかりやすい選挙はありませんし、民主党が世襲を否定する覚悟も国民には極めてわかりやすく伝わるでしょう。メディアの興味は「石原 vs 小沢」の選挙区に集中し、議論は世襲がいいか悪いかに収斂します。こういう場合、守りに回り、大義名分の少ない自民党の勝率は低いものとなるはずです。このアンケートを読んだPR会社の大物は「ウーン」と唸ったあと、「これだよ、これなら勝てる」と大喜びで帰っていったことを覚えています。
この大物氏は単なるPR業者とはいえない、一種のフィクサーでした。大企業のスキャンダルをもみ消したと書かれたこともあるし、原発擁護のPRなど汚れ仕事もうまくやってきたという人物でしたが、週刊誌編集長をバカにすることもなく、私はこまめにつきあい、食事をよくしていました。彼にいわせれば、週刊誌の編集長が一番世論の流れを知っているというのが、つきあう理由だということでした。
彼があれだけ「イケル!」と叫んだのに、民主党から全然「世襲反対」の政策が打ち出されないなと思っていたら、件の大物がグチをいいにきました。「小沢がね、俺は選挙区を離れるのはイヤだっていうんだよ。あれじゃ勝てないな」
本当に進言したのかどうかはわかりません。私へのリップサービスだったのかもしれません。しかし私のこの提案は、今でも有効だと思います。