自民党最大派閥が常任幹事会新設、「安倍派」が消え「塩谷派」に変更か自民党安倍派の会合で発言する会長代理の塩谷立(左)。派内に「常任幹事会」を新設し、塩谷を座長とする集団指導体制を導入する案が浮上。安倍派の後継体制の輪郭が見えてきた Photo:JIJI

 元首相の安倍晋三が凶弾に倒れてから1年以上にわたり会長不在で混迷を続けている自民党安倍派の後継体制の輪郭がようやく見えてきた。派内に「常任幹事会」を新設し、安倍派会長代理で元文部科学相の塩谷立をその座長とする集団指導体制を導入する案だ。ただし、派内には不満、反発が根強く存在する。新体制案の背後に元首相の森喜朗の影が色濃く見えるからだ。このため最終決着とはいえない。

 そもそも安倍の急死後、5人の派閥の幹部の名前を挙げて集団指導体制を提唱したのが森だった。いわゆる「5人衆」だ。官房長官の松野博一、経済産業相の西村康稔、自民党政調会長の萩生田光一、国対委員長の高木毅、参院自民党幹事長の世耕弘成。これに対して首相の岸田文雄は「満額回答」した。しかも5人が就任したのは重要ポストばかり。「5人衆」は岸田によってオーソライズされた。

「会社で言えば株主総会もなければ役員会も開かれないまま元社長が出てきて勝手に決めた人事」(安倍派幹部)との不満が残った。

 ただ岸田にすれば衆参合わせて100人の国会議員を擁する最大派閥との向き合い方は自身の政権運営にとって最も重要なポイントだ。その効果はてきめんだった。森は5人衆を集めては繰り返した。「しばらくは岸田さんに取って代わるような政治家がいないのだから岸田さんを支えなさい。いずれ時がたてばおのずと会長にふさわしい人物が見えてくる」

 森は周辺にこう語っている。

「西村さんは首相候補、萩生田さんは幹事長候補として努力してもらいたい」