すばらしき学校生活

 学校がこのようなところですから、基本的に家では経験できないようなたくさんの経験のメニューが子どもたちのために用意されています。それは考えようによっては、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンやキッザニアの比ではないほど、豊かな世界ともいえるでしょう。ただし、テストさえなければ。

 テストは、そのための勉強に集中することで、確かに経験したことを意識的に記憶にとどめるには役立ちます。ちょっと興味のもてないことでも、テストに出ると言われれば、何とかして理解できる糸口を探そうとして、それがきっかけとなって、自分の興味対象になるかもしれません。しかしそれ以外の点で、テストの存在は百害あって一利もなしだと、私は考えています。

 しかしこれを言うことが、ただの気休めにすぎないことも、読者の多くは感じていることでしょう。それはその通りです。なにしろ、テストの点が良ければ「良い」学校に進学でき、「良い」就職に結びつきます。逆に成績が悪くて落第してしまったり、大学に進めないと、その学歴だけで、よほど別のところで才能を発揮しない限り、社会的には不利になります。学歴で手に入れた知識がどれだけうわべだけのものだったとしても、世間はまず学歴を見て人を評価しようとします。ですから、学歴とそれに結びつくテストの成績が、学んだ知識それ自体の実質的価値とは別の意味で、人生でもっとも重大な教育上の関心事となります。