JAXA「初の学歴不問」宇宙飛行士試験で、意外な“真の課題”が不合格者の声で露呈今回の選抜試験を突破した2人は、「アルテミス計画」で月面を歩くかもしれない Photo:peepo/Gettyimages

募集時にJAXAが「学歴不問」と発表して話題になった、宇宙飛行士候補者選抜試験の結果が2月末に発表された。4000人超の応募者から選ばれたのは、東京大学卒の2人だった。このため、SNS上では「結局学歴か」という声も上がった。だが、安易にそう決めつけると本質を見誤る。今回の試験内容をひもとくと、JAXAが求める人物像の変化が見えてくる。そして、惜しくも不合格だった応募者の声に耳を傾けると、選抜試験の「真の課題」が明らかに。世間にはあまり知られていない、意外な改善点とは――。(宇宙ライター 林 公代)

「学歴不問」で大注目
史上最多の応募者が殺到

 月の女神アルテミスは誰にほほ笑んだのか。

 2月28日、日本や米国、欧州などが進める国際共同プロジェクト「アルテミス計画」で月面を歩く可能性がある、2人の日本人宇宙飛行士候補者が発表された。

 今回で6回目となるJAXA宇宙飛行士候補者選抜(以下、宇宙飛行士選抜)には史上最多の4127人が応募した。

 宇宙飛行士といえば、科学者やエンジニアなどいわゆる「理系」を学んだ人が多いが、今回初めて「理系」の縛りを撤廃。「学歴不問」として文系に門戸を広げただけでなく、大学を卒業していなくてもOKとした。

 ここまで「ゆるい」基準は世界の宇宙飛行士募集で類を見ない。その効果もあり、応募者が前回の4倍以上となった。

 2000倍強の倍率を勝ち抜いた2人とは、世界銀行上級防災専門官の諏訪理さん(46歳)、日本赤十字社医療センター外科医の米田あゆさん(28歳)だ。