学校組織のリーダーである校長に求められるリーダーシップとは何でしょうか。校長自ら改革を主導しよう、というのは間違いです。大事なのは、教員一人一人がやりがいをもって主体的に行動できるような環境づくり。「この人のもとでならチャレンジできるかもしれない」という教員や子どもたちの期待感を生み、「これをやってみたい」と声が上がる。それこそが「校長が最良のリーダーシップを発揮した姿」だと、十文字学園女子大学教授の塚田昭一氏はいいます。塚田氏が、埼玉県新座市立野寺小学校で実践した学校経営改革を取り上げた『幸福感に満ちた学校をつくる』(東洋館出版社)の一部を抜粋・編集して紹介します。
何が教員のやる気を奪うのか
教員の抱えている先入観
勤務校の職員室を見渡すと、たとえば“A先生は、やる気があるようには見えない”などと感じることがあるかもしれません。それに対して私は「(いまそう見えるからといって)最初からやる気のない教員などいない」と考えています。だからもし「この先生は…」などと感じられることがあるのだとしたら、その先生のやる気を失わせてしまう要因がどこかにあるはずなのです。
その元凶の一つとして私が考えるのは次の事柄です。
「これまで何年も行ってきたことは変えられない(変えたくない)」という頑なな(管理職を含む)教員の先入観。
もしこの見方が正鵠を射ているとすれば、なにがそのような先入観をもたせているのでしよう。その最たるものが、校務分掌組織のあり方です。満遍なく一人一役などとしてしまうことで生じる責任のあいまいさが、学校特有の鍋蓋組織をより強化してしまい、教員一人一人が主体性を発揮するのを妨げてしまうのです。
このような議論をもち出すと、「教員の意識改革を促すことこそ必要だ」といった主張がなされることもあります。しかし、私はあまり現実的ではないように思います。
人は、他者の思惑に合わせて、自分の意識を改革しようなどとは思わないからです。ここに「教員の意識改革」が、いつまで経っても古くて新しい課題でありつづける理由があります。さらに言えば、他者からの働きかけによってはもちろん、自分の意志の力をもってしても意識を改革するのは容易なことではありません。
そうであれば、校長として行うべきは明らかです。教員一人一人の先入観を剥がすことに尽きます(もし剥がせなければ、どのような学校経営改革案も画餅に帰します)。
そうすることができさえすれば、「新しい挑戦はおもしろい」「自分の得意を発揮できそうだ」といった機運を生み出すことができます。その過程で、教員は本来のやる気を取り戻し、自分のもてる力を意識的に発揮してくれるようになるのです。