敬志さんの長女、里英さんが醸造責任者になって6年目。里英さんは、蔵を継ぐ気がなく東京の会社に就職、次女と三女も家を出た際、敬志さんは蔵を畳む覚悟をした。だが、里英さんは酒の会を手伝ううち酒造に興味が湧き、2010年、26歳で東京農業大学短大部の醸造学科へ入学。同級生は18歳で情熱に溢れ、影響されて蔵を継ぐ決意を固める。翌年、東日本大震災で蔵は被災し、風評被害も重なり大変だったが、前進あるのみ。福島県清酒アカデミーでも学び、13年に蔵に入社。身に付けた近代的な酒造りと、自社の古い設備の違いに戸惑う里英さんに、敬志さんは1.2トンの酒造りを任せた。驚きつつも度胸がつき、里英さんは少しずつ設備を整え、衛生面を徹底的に見直し、酒はきれいさを増して高評価。そんな姉の姿を見て、三女も蔵を手伝い始める。「父の造った酒を、洗練していきます」と里英さん。父から受け継ぐ酒、次の舞台へ。

新日本酒紀行「蔵太鼓」辛口純米 蔵太鼓
●喜多の華酒造場・福島県喜多方市字前田4924●代表銘柄:純米大吟醸 きたのはな、特別純米 星自慢、特別純米 金澤屋●醸造責任者:星 里英●主要な米の品種:美山錦、五百万石、夢の香
新日本酒紀行「蔵太鼓」星里英さん Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「蔵太鼓」煙突は経済産業省の近代化産業遺産に認定 Photo by Kitanohanasyuzo