蜜のような甘さに爽やかな酸味と清涼感!笑みがこぼれる美酒

新日本酒紀行「笑四季」旧東海道沿いに立つ蔵 Photo by Yohko Yamamoto

 東海道五十三次の宿場町、近江国甲賀の旧東海道水口宿で、1892年に創業した笑四季酒造。創業からの哲学「天地自然の理に従う」を受け継ぐのは、5代目で醸造責任者を担う竹島充修(あつのり)さんだ。自然の美しさとは何かを問い、四季から着想した酒質設計を行い、全量純米仕込みで無添加無調整が信条。充修さんは新潟県出身で、高校から醸造を学び、東京農業大学の醸造科学科へ進む。卒業後は地元の原酒造で修業するが、研修先の東京の酒類総合研究所で、同じ学科だった笑四季酒造の加奈子さんと再会し交際を開始。“寿退社”して滋賀へ婿入りした。

 当時は大手メーカーに酒を納めていたが、1991年に、注文が完全にストップ。製造量は10分の1に激減し、地元向けも減少の一途となり満身創痍で東京に営業へ出た。すると、同様に厳しい状況を抱えた蔵元たちと出会い、同志で勉強会を結成。生酛造りや貴醸酒などの高度な技術を磨く。醸造を一から見直し、洗米は10kg単位で、布は使うたびに洗濯、少量ずつ丁寧で清潔な酒造りを徹底した。新商品は漢字の酒銘が主流の中、「センセーション」と名付け、蜜のような甘さと爽やかな酸味で勝負し、人気を博す。また、地元の品種の「滋賀渡船2号」の種籾(もみ)を農業生物資源ジーンバンクから入手し、無農薬無施肥で育て、丈が低くタンパク質を抑えた種籾を農家へ頒布。「僕らの仕事は、その土地に根付いたものだから」と充修さん。目指すのは四季折々、飲めば思わず笑みがこぼれる美酒だ。