あん巻き代金とは
釣り合わない融資を獲得

 そして言い尽くしたのか、まず奥さんが深いため息をついた。

「本当にうちを思ってくださってるのよね。社長、もう10年も前になるかしら?やっぱり信金さんの支店長が、融資の話でこうやって頭を下げにきたの覚えてます?」

「ああ、思い出したわ。山田支店長じゃんね」

「その前の岡島さんじゃなかったかしら?一生懸命やってくださったわ」

「ああ、ほうだった。あんたみたいな人いたんだわ。ほいだもんで、どうかもうそんな格好、やめてくれんかね」

「社長、短期ならいいんじゃないの?残高の報告なら私がうまくやっておくわ。ねえ、こんなに頼んでるんだから、少しやってあげましょうよ」

「何言っとるんだか、あんた!いや、部長!ほい!ひと月だけじゃんね!それでうちはいくら損すればいいんかね?」

「目黒さん!社長が言ってるのは、借りたときに銀行に払う利子のことよ!」

「えっと、0.48%です。1カ月であれば、印紙税合わせて12万200円になります」

「12万!あん巻きと釣り合わんもんね!」

「社長、もうおやめなさいよ。支店長さんも座ってくださいな。いい男が台無しですよ」

「ほだほだ、こういったのは目黒さんがやるもんだろうて。大将に土下座させて高みの見物とは偉くなったもんだに」

「ありがとうございます。やはり頼りになるのは社長さんしかおりません」

「やめりん。だもんで、うちが傾いたときはちゃんと助けてくりょう。まあ、その頃には支店長さんも豊橋にはおらんだろうけど…」