子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。
特性を見つけ、サポートするのが親の重要な仕事である
優秀な子が育つ環境で必ず行われていることが、習い事です。
たとえばハーバードやイェールなど、世界でも最難関大学の集まりであるアイビーリーグには、学力が高いだけでは合格できません。
学校の成績がオールAでも、SATと呼ばれる大学入試テストで満点を取っても、スポーツ、音楽、アート、演劇といった課外活動に取り組んでいない生徒は(ほぼ)合格できないのです。
アイビーリーグの合格を勝ち取った生徒のプロフィールを見ると、文武両道、文芸両道はあたりまえ。
勉強がトップレベルであるだけでなく、スポーツや音楽などの習い事面の技能も地域や国家のトップレベルを達成しているケースが多いのです。
さらに生徒会の活動、ボランティア活動など、忙しい学校生活の中で社会奉仕活動にも休む暇なく突き進んできたことがわかります。
日々の勉強に加えて課外活動に本気で取り組むことは並大抵の努力ではありません。
しかし、忙しい中でもあきらめずに努力を継続してきたことで、「何事にも全力で取り組む」という資質がたしかに身についていくのです。
このような例を見ると「優秀な人は血筋として優秀」なのだと考えてしまいますが、もともとの才能の問題ではありません。
親がどんな強みを見つけるか、その強みを活かした習い事の選択肢を用意できるか、子どものやる気を奮い立たせられるか、サポートできるか、といったことにかかっているのです。
日本でも、多くの家庭で子どもが4~5歳になると習い事を考え始めます。
「どうして習い事をさせるのですか?」と私の塾の父兄に聞き取りをしたところ、「子どもの可能性を広げるため」という声が一番多く聞かれました。
しかし、スポーツ、音楽、アート、ダンス、演劇など、数ある習い事のすべてを経験させることはできません。
また、いろいろな分野を経験させたいからと、次々に習い事を替える(やめさせる)ことは、子どもにとって「失敗体験」を積ませることになるので、非常によくありません。
そもそも習い事の目的は2つあります。
一つは子どもの好きなこと、得意分野を見つけて「強み」を持たせること。そしてもう一つが、「習慣力・勤勉性」を身につけさせるためです。
習い事をする上でもっとも大切なのが、やり続けること。
1年や2年でやめるのではなく、小学校、中学校、できれば高校時代も通して10年以上はやり続けることが重要です。続けていくことで、「物事をやり抜く習慣」が力強く育ちます。
「やり抜く習慣」は、勉強はもちろん、社会に出た時にも様々な経験を乗り越えるために子どもを支えてくれる大切な力です。
自ら始めたことに責任を持ち、困難にへこたれず、やり抜く。そんな姿勢を持つ人はどんな場所でも活躍していきます。
一方、この習慣が育っていない子どもは豊かな才能があっても大きく開花しません。やり抜かなければ、成功体験が積めない。成功体験が積めないと、自分に自信が持てない。いっそうチャレンジをしなくなる……といった悪循環が起きてしまうのです。
習い事はただやらせればよいのではありません。習い事を積極的に活用して子どもの人間形成につなげることが大切なのです。
一生懸命に課外活動に取り組み、人と競争し、協力をし、成功も失敗も経験をする。習い事をやり抜くことは、子どもの世界を広げてくれるのです。
・習慣力と、子どもの特性(強み)を伸ばすのに最適
・特に、やり抜く習慣が身につきやすい
・最低10年続けることで、本物の自信となる(アイデンティティ確立に役立つ)
・ただし、様々な習い事を取っ替え引っ替えでは、自信は伸びにくい
(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)