海外出張における観光は
どこまで許されるか

 第二の問題は、当初からの行程において、職務(研修)が半分以下、観光的日程が半分以上であったことである。

 出張である以上、「観光する時間が少しでもあるのはまかりならん」とまではいえまい。せっかく行ったのだから、朝の時間を利用して宿舎から徒歩で行ける範囲内で名所・旧跡を見に行くとか、ちょっとした買い物をするとか、そうした隙間時間での観光的な行動まで禁止するのはやりすぎだろう。

 要するに、出張は職務が中心なのだから、数時間も確保するような観光的な日程はそもそも入れてはいけないということだ。行程表に観光日程があるようでは、職務の時間があったとしても「職務は名目にすぎず、本当の目的は観光なのではないのか」と批判されても仕方があるまい。

 繰り返すが、海外出張に行った際に、観光的な行動は一切してはいけないというのではなく、観光するのであれば、あくまでも時間があるときに付随的に行うものだということだ。

 筆者が国家公務員として最後に海外出張に行ったのが、まさに今回問題になったフランスとベルギーであったが、フランスでは在日フランス大使館のご好意もあり、午前午後とみっちりヒアリングなどの日程を入れることができた。

 また、ベルギーでの目的はEU本部でのヒアリングと日本の制度の紹介であったが、アポは午前中だったのでパリから早朝の特急でブリュッセルに向かい、午後、帰りの電車までの時間、多少ブリュッセル市内を見て回った。とはいえ、その半分は、昼食および裁判所見学による資料集めに費やしたのだが。

 パリでも、調査終了後、隙間時間を見つけて近くの美術館を短時間、駆け足で訪れることもあったが、できる観光はその程度。また別の機会で、海外での国際会議に出席する幹部に随行した際は、会議開催中の隙間時間はほぼゼロで、宿舎のホテルの周辺を多少散歩する程度だった。松川議員がかつて在籍していた外務省でも、こうしたことは当たり前だと思う。