その影響で、注文したのと違う商品が届いた、商品の個数が足りない、在庫が切れて顧客に配送できないなど、顧客や営業担当から苦情が殺到。困った主任は、Aのためだけに詳細な業務マニュアルを作成して何回も内容を説明するなど、ミスが出て苦情が出るたびに指導したが、一向に改善されない。仕方がないのでAが作成した注文データや商品在庫表を主任自らがチェックし、ミスによる他への影響を最小限にとどめていたが、今年の2月末でまた1人の退職者が出たため、チェックに多くの時間を割くことができなくなった。

 Bは入社後1週間の新入社員研修を終えると、人手不足の管理課に配属された。主任が業務レクチャーを行うと、すぐに仕事の要領をつかみ、配属から1カ月後には他の先輩たちと同じ内容の業務をこなせるようになった。一方、Aは相変わらずで、毎日大なり小なりのミスを繰り返しては関係者を困らせていた。

新入社員のBが、先輩のAのチェック係に……

 5月中旬。商品在庫システムの全面的刷新に伴い、C課長と主任がその業務を担当することになったので、主任はAの業務チェックがほとんどできなくなった。他のメンバーも自分の持ち場が忙しく、Aの業務チェックまでは時間が取れない。そこで担当が少ないBがチェックをすることになった。

「あっ、また在庫計算を間違ってる。訂正しておこう」
「乙社から注文を受けた商品を間違えて丙社に送ってる。Aさんに事実確認しなきゃ……」

 午後3時。Bは自分の業務を終えると、毎日Aが作成した注文書や商品ごとの在庫管理表のチェックを始めるのだが、注文個数や顧客先名を間違えるなどミスの数が多すぎて、修正を続けているうちに残業までするようになった。しかしAが反省する様子はまるでなく、おまけに定時で帰ってしまう。その態度にあきれたBは、C課長に「こっちは残業までしてチェックしているのに、A先輩の態度はおかしい」と訴え、C課長は困った表情で懇願した。

「君には悪いが、商品在庫システムの刷新が済んだらチェック係を交代するから、数カ月ガマンしてほしい」

 8月下旬。Bに疲労の表情を感じ取ったC課長は、D部長にAの件を話し、彼の処遇に困っていると嘆いた。報告を聞いたD部長は立腹した。

「年齢的な面と大卒であることを考慮して基本給30万円、昨年の冬と今年の夏のボーナスも30万円ずつ出したのに。新入社員より仕事ができないとはけしからん!」