C課長も同調した。

「まったくです。A君はとても給料分働いているとは思えません。いっそ彼をクビにして新しいメンバーを雇った方がよくないですか?」
「しかし、一度雇った社員は簡単にはクビにできないし、新しいメンバーを雇うのは人件費の関係で無理だよ」
「私に考えがあります。もしA君を管理課に残すなら、彼の給料を下げたらいかがですか?B君と同じにして、浮いたお金で新たにパート社員を入れましょうよ」
「それは名案だ。B君の基本給が23万円だからそうしよう」

Aに「給料を新入社員並みに下げる」と伝えたところ……

 翌日。D部長はAを呼んで言った。

「C課長から報告を受けたが、仕事がうまくいっていないそうだね」
「はあ……」

 気のない返事をしたAに激怒したD部長は、一気にまくし立てた。

「主任が君だけのために業務マニュアルを作った上で、再三注意、指導しているのにちっとも仕事を覚えず、ミスばかりして新入社員がフォローしているそうじゃないか。これではとても30万円分の働きをしているとは言えない。だから9月から、君の基本給を新入社員と同じ23万円にします」

 Aは猛反発した。

「私は仕事を一生懸命にやっています。それなのに給料を下げるなんて納得できません」

 しかし、D部長は引かなかった。

「君の仕事はね、新入社員でも皆1カ月でほとんどマスターできる内容で、B君が特別優秀なわけではない。それなのにいまだにミスばかりしている君と、きちんと仕事をしている同年代メンバーの給料が同じじゃ、かえって不平等でしょう?」

 それでもAは、給料が23万円だったら甲社には転職しなかったと言い、激しく抵抗を続けた。結局この場では双方とも主張を曲げず、話は決裂した。