能力不足な社員に対する策はあるか?

<対処策の一例>
(1)Aが担当している業務範囲を縮小した上で、減給を交渉する
(2)管理課以外の部署に配置転換をする
(3)次期の定期昇給を行わない
(4)冬季賞与の業績給部分を減額して支給する……など

 E社労士のアドバイスを受けたD部長は、次の日にC課長と話し合い、以下のように決めた。

○当面、Aの業務量を従来の3分の2に減らし、残りをBが担当する。Aの業務チェックはC課長と主任が分担し、指導は継続する。Aの給料は減額しない
○配送センターに欠員が出た場合、Aの配置転換を視野に入れる
○12月に支給する賞与の業績給部分を減額する
○Aの能力不足が解消しない場合、来年4月の定期昇給は行わない

 Bは自分の仕事が増えたがそれでも就業時間内で終了できるし、Aの業務チェックをしなくて済むようになったので、気が楽になったはず。しかし……。

ある日、「退職したい」という申し出が

 9月に入り、C課長の元にBから退職したいと申し出があった、理由を尋ねると、Aの業務チェックをしているうちに、仕事に対するやる気を失ったからだという。C課長と報告を受けたD部長は、Bに退職を思いとどまるよう説得したが決意は固く、9月末でBは退職することになった。

「もう、A先輩と一緒にいたくないんです」

 Bの言葉を聞いたC課長とD部長は、心の中でつぶやいた。

「それは俺たちも同じだよ。トホホ……」

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。