それどころか、バラクが脇道へ逸れる人だとわかったうえで結婚した。バラクは目標達成へ向かうのにいつも――予想どおり!――確実でない道を選ぶ人だとわかっていた。この人は、普通の道や簡単すぎる挑戦はすべて斥ける。いろいろな仕事を同時にさばくのに全力を注いでいて、本を書きたいから、教えたいから、自分の価値観から外れたことはしたくないからと、企業での楽な仕事を断る。どちらの家族にも、あてにできる財産はなかった。やがて子どもをつくるわたしたちの能力にまで疑問符がついて、妊娠に向けた数年間の厳しい格闘がはじまった。その後、政治家としてのバラクのキャリアでは、あの途方もない空飛ぶバイクも経験した。

 わたしたちは、こういうカオスのすべてにいっしょに飛びこんだ。確かなのはただひとつチームとして立ちむかうほうがうまくいくということだけだった。

数えきれない妥協、犠牲の果てに
たどり着いた現在の夫婦関係

 早い時期にわたしは学んだ。パートナーは問題の解決策にならないし、ニーズを満たしてくれる人でもない。わたしが望んでいたのは、わたしの愛とは関係なく、自分自身の価値観に従って生きるパートナーだ。わたしが望んでいたのは、正直さを大切にするからこそ正直で、誠実さを大切にするからこそ誠実な人だ。

 いまわたしは、これを娘たちに伝えている。稼いでくれる人、世話をしてくれる人、子どもの親になってくれる人、問題から救ってくれる人を探しているという理由で、だれかといっしょになってはいけない。わたしの経験では、そういう計画はたいていうまくいかない。ゴールは、あなたのために仕事をする人を見つけることではない。あなたといっしょに仕事をして、あらゆる面で、あらゆるかたちで力になってくれる人を見つけること。

 相手がひとつの役割しか引き受けようとせず、「お金は稼ぐから、おむつを替えるのは期待しないでほしい」なんてことを言うのなら、わたしのアドバイスはこうだ。安全なところへ避難開始。

 娘たちにはこう話している。うまくいくパートナー関係は、強いバスケットボール・チームに似ている。そのチームはふたりの個人から成り立っていて、どちらもさまざまな高いスキルを持ち、互いに役割を交代できる。一人ひとりの選手がシュートだけでなくドリブル、パス、ディフェンスのやり方も知っていなければならない。