8月末、「無能・暴力政権に対する国民抗争の最前線に立つ」として、韓国野党第1党の党首が国会議事堂前で無期限のハンガーストライキを始めた。日本が福島第一原発の処理水を海洋放出していること、そしてそんな日本との関係性維持に努める与党を批判するためだという。しかし無期限の断食という命を懸けた抗議行動に対し、韓国世論はさほど支持も同情もしていないようだ。そもそもなぜ野党党首がこんな手に打って出たのか?(韓国在住ライター 田中美蘭)
何がなんでも、政権批判と日本へのネガティブキャンペーンを成功させたいようである。韓国の野党第一党「共に民主党」の党首、李在明(イ・ジェミョン)氏の話だ。
これまでにも「共に民主党」や左派系市民団は、日本の福島第一原発の処理水の海洋放出と、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権がこれを容認しているとして強く反発し、週末にソウルをはじめとする都市部でデモ活動を行ったり、メディアを通じて政権批判と処理水の危険性を訴えたりしている。
8月31日、李氏が抗議として無期限のハンガーストライキに入ることを宣言した。国民に国の危機的状況を訴えることが目的というが、どうやら支持や同情を得られているとは言い難い状況のようである。
文在寅前大統領もハンガーストライキを激励
李氏のハンガーストライキは国会の前で「共に民主党」の議員たちと共に行われているのだが、一般的にハンガーストライキのイメージといえば、一定の場所で座り込みをして、そこを動かずに抗議する活動である。しかし李氏の場合は、ハンガーストライキの合間を縫って、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領を訪問したり、市民団体主催の週末のデモに参加したりと党首としての活動も行っている。これに対して「これだけ活動しながらハンガーストライキをするヤツは初めて見た」と李氏を皮肉ったコメントも見られる。
ハンガーストライキについてのニュース記事のコメント欄をのぞいてみると、「あなたの勇気ある決断と行動を支持します」「李氏の健康をとても心配しています」「文前大統領、どうか李氏を勇気づけてください」といった、文氏や李氏の熱烈的な支持者と思われる書き込みも一部あるが、大多数のコメントは否定的だ。国民の多くは今回の李氏のハンガーストライキを「単なるパフォーマンスに過ぎない」「国や国民のためを思ってのものではない」と考えている、ということである。
さらに文氏が「尹政権の暴走は目に余るものがあり、(李氏が)ここまでしなくてはならないことを心配している」とねぎらいの言葉を李氏に送り、「現政権がすべてを破壊し、国民に戦争を仕掛けている」と李氏が返したというやりとりも報道されている。調子のいい言葉を述べながら、常に国民を分断するよう扇動しているのはどちらかと問いただしたくなるが……。
9月6日、李氏のハンガーストライキは7日目に入った。おそらく、そう遠くない時期に「ドクターストップがかかった」といった理由で打ち切りになるのではないかと筆者はみている。