頑張っても成果が出ない」「思うように考えがまとまらない」「他人からいつも評価されない」と悩む方は多くいます。その悩みを解決するために「個人のセンス」も「やみくもな努力」も必要ありません。人に認められている「優れた考え」から自分の脳内に「再現性のある回路」をつくればいいのです。『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』の著者、クリエイティブディレクター中川諒氏による「いつも結果を出す人」の秘伝の思考技術を紹介します。

「知識は豊富だけど考えが浅い人」と「優れた考えを瞬時に出せる人」の決定的な違いPhoto:Adobe Stock

「予定調和」をいかに崩せるか

まずは「おもしろい」を因数分解することで、みんなが認める企画の要因を探してみたいと思います。

理解しておかなければならないのは、「おもしろい」の一番の敵は予定調和だということです。

作詞家でプロデューサーの秋元康さんも、著書『企画脳』(PHP文庫)の中で「当たり前のことや、誰もが考えるような発想からは、何も新しいものは生まれない。予定調和をどう突きくずしていくか。それが、勝てる企画の発想法なのである」と言っています。

つまり、人は想定していないことに、おもしろさを感じるのです。

あなたがこれまで見てきた映画やドラマを思い出してみてください。

予想通りに展開するものは凡庸に感じ、自分の予想が裏切られたときに驚きや興奮を感じたと思います。

わたしたちは心のどこかで裏切りを期待しているというのはおもしろい事実です。

予定調和ではないとは、つまり「入口と出口にギャップがある」ということです。

入口か出口のどちらかが見えていれば、そこにギャップが生まれるように、もう片方を設計してあげればいいのです。

これがおもしろいをつくりだすコツ、発想の回路の根幹です。

これは世の中に流通する言葉やコンテンツでも同じことが言えます。

たとえば、ガツガツしていない男性を「草食男子」と言ってみたり、キツい性格に見えて実は甘えん坊な人を「ツンデレ」と言ってみたり。『君の膵臓をたべたい』『下町ロケット』『嫌われる勇気』『ホームレス中学生』『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』などなど。

ヒットしたコンテンツはタイトルだけでも言葉の組み合わせにギャップがあり、おもしろそうに見えます。

そして、ヒットを出し続けている人たちは、このような法則を完全に理解しています。

アイデアマンと呼ばれる人たちは、「発想の回路」のパターンを沢山もっている人たちです。

彼らは即座にアイデアや企画が閃いているように見えますが、その場でゼロからつくっているわけではありません。

頭の中に複数の回路をあらかじめ用意してあるので、それを瞬時にガチャガチャと組み替えてアイデアや企画を出しているだけなのです。

その姿を見ると「なんでこれほどおもしろい企画をすぐに思いつけるんだ」と驚き、「自分とは違う」と自信をなくしてしまうかもしれませんが、その必要はありません。

この差は「発想の回路」をもっているかどうかなのです。

わたし自身この仕事をはじめた当初は、アイデアはセンスで閃くものだと思っていました。

ただ、どれだけ粘っても閃きはやってこなかったのです。

若手の頃は誰よりも事例収集を行い、業界内で一番広告事例に詳しいと自信をもって言えるくらい知識はありました。

それでも自分の企画は通らない。

なぜかと考えると、知識はあっても自分の中に回路がなかったからだと今は思います。

アイデアの電球自体には意味がありません。

光って誰かの役に立つようにするためには、発想の回路が必要だったのです。

(本記事は中川諒著『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』から抜粋し、一部を改変・編集したものです)