「頑張っても成果が出ない」「思うように考えがまとまらない」「他人からいつも評価されない」と悩む方は多くいます。その悩みを解決するために「個人のセンス」も「やみくもな努力」も必要ありません。人に認められている「優れた考え」から自分の脳内に「再現性のある回路」をつくればいいのです。『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』の著者、クリエイティブディレクター中川諒氏による「いつも結果を出す人」の秘伝の思考技術を紹介します。
「予定調和」をいかに崩せるか
まずは「おもしろい」を因数分解することで、みんなが認める企画の要因を探してみたいと思います。
理解しておかなければならないのは、「おもしろい」の一番の敵は予定調和だということです。
作詞家でプロデューサーの秋元康さんも、著書『企画脳』(PHP文庫)の中で「当たり前のことや、誰もが考えるような発想からは、何も新しいものは生まれない。予定調和をどう突きくずしていくか。それが、勝てる企画の発想法なのである」と言っています。
つまり、人は想定していないことに、おもしろさを感じるのです。
あなたがこれまで見てきた映画やドラマを思い出してみてください。
予想通りに展開するものは凡庸に感じ、自分の予想が裏切られたときに驚きや興奮を感じたと思います。
わたしたちは心のどこかで裏切りを期待しているというのはおもしろい事実です。
予定調和ではないとは、つまり「入口と出口にギャップがある」ということです。
入口か出口のどちらかが見えていれば、そこにギャップが生まれるように、もう片方を設計してあげればいいのです。
これがおもしろいをつくりだすコツ、発想の回路の根幹です。
これは世の中に流通する言葉やコンテンツでも同じことが言えます。
たとえば、ガツガツしていない男性を「草食男子」と言ってみたり、キツい性格に見えて実は甘えん坊な人を「ツンデレ」と言ってみたり。『君の膵臓をたべたい』『下町ロケット』『嫌われる勇気』『ホームレス中学生』『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』などなど。
ヒットしたコンテンツはタイトルだけでも言葉の組み合わせにギャップがあり、おもしろそうに見えます。
そして、ヒットを出し続けている人たちは、このような法則を完全に理解しています。
アイデアマンと呼ばれる人たちは、「発想の回路」のパターンを沢山もっている人たちです。
彼らは即座にアイデアや企画が閃いているように見えますが、その場でゼロからつくっているわけではありません。
頭の中に複数の回路をあらかじめ用意してあるので、それを瞬時にガチャガチャと組み替えてアイデアや企画を出しているだけなのです。
その姿を見ると「なんでこれほどおもしろい企画をすぐに思いつけるんだ」と驚き、「自分とは違う」と自信をなくしてしまうかもしれませんが、その必要はありません。
この差は「発想の回路」をもっているかどうかなのです。
わたし自身この仕事をはじめた当初は、アイデアはセンスで閃くものだと思っていました。
ただ、どれだけ粘っても閃きはやってこなかったのです。
若手の頃は誰よりも事例収集を行い、業界内で一番広告事例に詳しいと自信をもって言えるくらい知識はありました。
それでも自分の企画は通らない。
なぜかと考えると、知識はあっても自分の中に回路がなかったからだと今は思います。
アイデアの電球自体には意味がありません。
光って誰かの役に立つようにするためには、発想の回路が必要だったのです。
(本記事は中川諒著『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』から抜粋し、一部を改変・編集したものです)
中川 諒(なかがわ・りょう)
クリエイティブディレクター/コピーライター
1988年生まれ。幼少期をエジプトとドイツで過ごす。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、2011年に電通に入社するも希望のクリエイティブ局には配属されず、自主制作をはじめる。2017年、「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」のU30プログラム「ヤングライオンズ」の国内予選を150組を超える出場者の中から1位で勝ち抜き、日本代表に選ばれる。2018年、TCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞を受賞し、社内の転局試験に合格。営業から念願のクリエイティブ局に異動。同年カンヌライオンズのアジア大会「ヤングスパイクス」本戦で1位を獲得。2019年、Googleにクリエイティブディレクターとして出向し、シンガポールとオーストラリア・シドニーで勤務。帰任後、ユニクロ、コカ・コーラ、サントリーなどの広告を制作。2023年よりアクセンチュア ソングのクリエイティブエージェンシーDroga5に所属。著書に『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』(ダイヤモンド社)『いくつになっても恥をかける人になる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。「恥研究家」としても活動。
Twitter/Instagram:@ryonotrio
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「いつも結果を出す」ための仕組み
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「アイデアが思いつかない」
「企画が通らない」
「頑張っても成果が出ない」
このように悩んだことはないでしょうか。
「アイデアはいいけど、企画になっていないね」
そう言われた経験がある人は、本書を読んで「発想の回路」を身につけることで、他人も納得する企画を生み出すことができるようになります。
「コンテンツ企画」や「商品企画」「事業企画」「広告企画」という仕事があるように「企画」は多くの会社で必要とされる職能です。
にもかかわらず、学校では誰も「企画」を教わっていません。
社会人になって企画部署に配属された途端、プロとして企画をする必要がある。
実は企画という職能はとても特殊な環境におかれています。
わたしは新卒で広告代理店に入社し、クリエイティブを希望していました。
しかし入社してから7年もの間、その夢は叶いませんでした。
入社直後に受けた「クリエイティブテスト」で落ちてしまったからです。
いくらアイデア本を読んでも、具体的にどうしたらアイデアが出せるようになるのかは分かりませんでした。
それからは、どうすれば人を動かす企画ができるようになるのかを、ただひたすらに考えて試し続けました。気づけば7年もの月日が経っていました。
その中で気づいたのは「アイデア」や「企画」で結果を出すためには、個人のセンスに頼ってやみくもに努力するのではなく、人に認められた優れたアイデアから自分の脳内に再現性のある「回路」をつくる必要があるということです。
才能なしと見なされていたわたしが、自分なりの「回路」をつくった翌年、コピーライターの登竜門と呼ばれるTCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞を受賞し、アジア最大級の国際広告賞の若手部門で世界一位になったのです。
この本では、わたしが「発想力」を発揮するために、何をどうやってインプットし、アイデアを出して、企画を立てているのかを順序立てて説明しています。また仕事で出会った多くのクリエイターたちの思考や技術も参考に、誰でも再現可能な思考術として体系的にまとめました。
広告業界だけでなくどのような業種であっても、商品や事業開発などアイデアや企画が必要な人が実践できるように整理しています。
この本を読んだ人が、無駄な努力をしなくて済むように。
そして自分には才能がないと、自分の好きなことを諦めなくて済むように。
アイデアのつくり方、企画の立て方だけでなく、人生においてもどのように工夫すればいいのか、なるべく具体例を交えながら書いています。
【本書の内容】
1章 なぜ「アイデアはいいけど、企画になっていない」のか?
● 「アイデアが出ない」と言う人が勘違いしていること
●アイデアは閃きではなく工夫からはじまる
●企画をつくる5つのプロセス
●アイデアと企画の違い
● 「いい企画」の条件
●アイデアを企画に変える「発想の回路」
2章 アイデアは工夫からはじまる―工夫の4K―
●どこからアイデアを考えればいいのか分からない
●4つのアイデアがすぐに生まれる「工夫の4K」
●工夫の「4K思考マップ」でアイデアを出す
●アイデアが出ないときに試す5つのスイッチ
●ユニークなアイデアをつくる2つの鍵
3章 アイデアを「企画」にする―発想の回路―
●他人が「おもしろい」と感じて、アイデアは企画になる
● 「発想の回路」が生まれたきっかけ
● 「発想の回路」がある人とない人の違い
●今すぐ「おもしろい」をつくれる10の回路
4章 あなたの仕事で使えるオリジナルの「回路」をつくる
●評価される「おもしろい」の基準を知る
●自分の仕事に直結する、オリジナルの発想の回路をつくる
●つくった回路を試してみる
●回路は通電不順を見つけるのに役出つ
5章 発想体質のつくり方
●センスは磨くもの
●①自分の鮮度を意識する
●②アイデアは表現しないと妄想で終わる
●③自分を妨げる「恥」と向き合う
●④ 「デモ星人」「イイネ星人」「ナンデ星人」との付き合い方
●⑤ 「何かやろうよ」は受け身だということを理解する
●⑥うまくいっていないことこそ「アイデアの宝庫」
●⑦ひとつのことに集中してはいけない
●⑧飽きは創造の入口
●⑨自分の興味のエンジンを刺激する
●⑩「行動の企画化」で習慣化させる
●⑪「タスク」ではなく「プロジェクト」と捉える
6章 工夫は自分の未来を変えるチカラ
●小さな工夫が「予想もできない未来」にあなたを連れていく
●工夫があなたのキャリアをつくる
●努力は有限、工夫は無限
●どんな小さな工夫も立派なアイデアだ
●発想力は周りから評価されにくい
● 「ビッグアイデア」という功罪
●工夫はあなただけのタイムマシーンだ