そのルールの名は、5%ルール。これは、購入金額がわからなくなってしまった場合には、「売った金額の5%を購入金額とみなして譲渡所得の計算をしなければいけない」というルールです。

・父から相続した不動産が1億円で売却できた
・しかし、父がいくらでこの不動産を買ったのかは完全にわからない

 この場合、売却した金額1億円の5%にあたる500万円が購入金額と扱われます。その結果、1億円から500万円を引いた9500万円が譲渡所得になり、ここに20.315%の税金がかかりますので、2000万円弱の税金を払わなければいけません!

「父はそんな安い金額で買ったはずはない」という声が聞こえてきそうですが、残念ながら国が定めたルールですので仕方ありません。

 購入時の契約書などが残っていれば過去に購入したときの金額がわかるのですが、捨ててしまうと金額を明確にすることはなかなかできません。

 なお、権利証には通常、購入金額は書かれていませんので、権利証だけあっても購入金額を明らかにすることは難しいです。このような事態にならないようにするためにも、不動産をいくらで購入したかは、必ずわかるようにしておかないといけません。

税務署との交渉方法

 なお、合理的に過去の購入金額を算出し、その金額を税務署に納得させることができれば、その金額を購入金額として申告することも認められます。

 例えば、購入した不動産会社が今もあるなら、購入当時のチラシやパンフレットを探してもらうのも1つの手です。登記簿謄本の抵当権の欄で、購入時にいくらのローンを組んでいたのかがわかるので、そこから推測していく方法もあります。

 いずれにしても、税務署を納得させるには、かなりの理論武装が必要になります。これまで、この手の相談に対応してきた実績のある不動産鑑定士であれば、過去の購入金額を合理的に算出することが可能です。

 ただ、最終的に税務署にそれを認めさせられるかどうかは確定申告書を提出する税理士の腕次第になります。相続や不動産売却(この分野のことを業界用語で「資産税」といいます)に強い税理士に相談しましょう。

(本原稿は、橘慶太著『ぶっちゃけ相続「手続大全」』を抜粋・一部加筆したものです)