また、これまでジャニーズと対立するメディアに自社のタレントを出演させない、ジャニーズタレントの登場する広告を掲載させないといった判断は、同社の広報部門が行っていたはずです。その責任者だったのは白波瀬前副社長です。実情はどうだったのかを本人に聞いてみないと、今後のマスコミとの関係を進歩させることはできません。

 このように、ジャニーズ事務所の内情をよく知る弁護士や役員が記者会見に出席しないのなら、マスコミがいくら質問したところで、補償のための取り組みについて聞けることは限られています。

 この時点で、ジャニーズ事務所の本音が透けて見えたと思ったのは私だけでしょうか。記者会見は、正直的を射ないものでした。私は、これからでもいいので、会見に出席しなかった関係者が別々に記者会見を行い、被害者たちの前でジャニー氏やメリー氏が何を語っていたかを証言する義務があると思います。

 21世紀に入っても、部下に手を上げるのが悪いことではないと思っている経営者の下で働いていたタレントたちが、二人のことを完全否定することなどできるはずはありません。たとえば今回の記者会見で出た「噂は知っていたが、実際に相談されたことはなかった」などという言葉は、空疎にしか聞こえませんでした。

一般企業の社長就任会見なら
大荒れになったはず

 私は先日、ジャニーズ事務所と一人で戦った芸能リポーター、梨元勝さんの生き方を振り返る記事を書きました。ベテランの梨元さんがもし今生きていたとしたら、記者会見で東山氏にこんな質問を投げかけたでしょう。

「東山さんは森光子さんと非常に親しく、彼女のことを神様であり恋人だともお話になっていました。それって、メリーさんの命令だったのですか?もしそうだとしたらパワハラを受けていたことになるし、違うのなら年齢差(森さん1920年生まれ、東山氏1966年生まれ)を考えると、大組織の社長さんとしてはギネスものの大恋愛事件ですね」

 実際の会見でも、東山氏と森光子さんの関係についての質問は出ましたが、このように相手がはっきり返答せざるを得ない二者択一の質問の仕方ではなかったため、簡単に否定されて、そのまま終わってしまいました。

 ただ、この質問一つをとっても、なぜかメディアは優しい対応で済ませてしまいます。普通の企業の社長就任会見なら、このような話題が出ただけで大荒れ確実です。