ビッグモーターの街路樹伐採を
誰も気づかなかったのか
車両保険金の水増し請求に、パワハラ二世――。世間を呆れさせている中古車販売大手のビッグモーターですが、それらのことより私が気になるのは、多くの店頭で街路樹を勝手に伐採・枯死させていたことです。
街路樹は街の美観のためだけに植えられているわけではありません。防災、特に防火のために植えられている公共財です。街路樹に銀杏が多いのは含水量が多いためでもあり、関東大震災では、銀杏並木のおかげで、火災から免れた街もあることは有名な話です。管轄も法的に決まっていて、国道沿いの街路樹は国土交通省、それ以外はそれぞれの自治体です。整備もそれぞれの役所が責任をもっています。
実際、自分の家の周囲でも、しょっちゅう街路樹の整備は行われていますし、街路樹の根元の雑草狩りも自治体の委託した業者などが熱心にやっているのを見てきました。しかるに、今回のビッグモーター問題では、店舗前の街路樹が明らかに不審な形で伐採されたり、枯れたりしていることが話題になりました(ビッグモーターは「除草剤の撒きすぎ」と弁明していますが、「除草剤でこんなことにはならない」と専門家は誰もが指摘しています)。
税金で植えられ、住民の安全のために植樹されている街路樹が勝手に切り倒されている、いや、少なくとも必要な場所からなくなっていることに、街路樹を整備する業者は誰も気がつかなかったのでしょうか。自治体や国土交通省に対して、一切報告がなかったとも思えません。
ありうるのは、ビッグモーターが業者になんらかの利益誘導をしたのか、あるいは業者がビッグモーターの所業を見て見ぬふりをして面倒を避けようとしたのか、さらには地方自治体が報告を受けても、面倒だから放置していたのか。この3つくらいしか理由は考えられません。
実際、この伐採行為はレッキとした犯罪です。「道路の附属物である街路樹の枝を勝手に切る、撤去するなどして、道路の効用を害したり、交通に危険を生じさせたりした場合」には、道路法違反(道路法101条)となるのです。