長引くインフレとの戦い
米国では賃金上昇率高止まり
コロナ禍からの回復に端を発した世界的なインフレはまだ終わっていない。ピーク時に9%まで上昇した米国の消費者物価上昇率は、最近は3%程度まで低下してきた。しかし、賃金の上昇率は4%台半ばで高止まっている。
原油価格も再び上昇の気配を見せており予断を許さない。
連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%までインフレが低下するには、なお時間がかかりそうだ。ユーロ圏や英国の情勢はさらに厳しい。
米国で2021年の春にインフレが頭をもたげたとき、FRBは「一時的」として静観を決め込んだ。それどころか量的緩和を拡大し続けた。
FRBが利上げを始めたのは約1年後の22年春であり、その頃にはインフレはもう簡単には収まらない状況になっていた。
こうした経緯があるため、今回のインフレは金融引き締めの遅れに原因があると批判されている。
日本でも歴史的な物価上昇が続いているなかで「緩和維持」を続ける日本銀行への批判が一部には出ている。
確かに、「物価の安定は金融政策の役割」という支配的な考えに従えば、インフレもデフレもことごとく金融政策の失敗ということになる。
しかし、本当にそうだろうか。