メガネを外して物事を見てみよう

瀧本 藤野さんがおっしゃるように、日本全部がダメだ、と思いこんでいる人は「古いメガネ」をかけてしまっているんだと思います。「古いメガネ」で物事を見ている人は、パラダイムチェンジが起きている時にそれを認めず、無理矢理に理屈を作るんですね。

 たとえば天動説が信じられていた時代に地動説が登場した場合を考えると、観測技術が進むほど天動説は破綻し、地動説をとればすべてがシンプルに説明できるとわかるわけです。

 ところが「古いメガネ」をかけている人は、一生懸命、複雑な理論を考えてまで天動説ですべてを説明しようします。今の日本の株式市場についても、経済メディアが「株といえば日経225」というパラダイムで物事を見ており、その視点で何でも説明しようとしているように感じます。「古いメガネ」を外さないと、大きな変化に気づくことはできません。

藤野 「古いメガネ」って、社会人になってから外すのは大変なんですよね。子どものころはメガネをかけていなかったはずの人でも、ひとたび社会に出てメガネをかけると、肌に張り付いて取れなくなってしまう。この点、私は大学で学生に教えていると、若者のメガネを外せる感覚があるんです。

 大学生にもなるとメガネはかけているんだけれど、まだ張り付いていない。教えているとメガネが割れる瞬間があって、学生が今まで誰かから詰め込まれていた先入観や偏見から抜け出していくのを見ると、感動を覚えることがあります。

 自分の本業の以外に、授業を持って単位もあげて…となるとそれなりに大変なんですが、これは僕の「投資」のひとつですね。投資というのは「お金」に限らないんですよ。そのへんを大学生にも知ってほしいです。投資家思考のひとつとして。

瀧本 私は、教えるのは基本的に「18歳」をターゲットにしているんです。京都大学の授業についても、1年生の春学期が一番大事だと思っています。「ビジネススクールで教えないか」「学部で授業を持ってほしい」といった要望を受けることもありますが、興味はありません。変化を起こすのはいつも「新しい人」「参加していない人」「何も持っていない人」であって、古い見方を知らない人のほうが現状に疑問を持てる。

18歳というタイミングで「ゼロから物事を考えること」を学ぶのが大事だと思っているので、授業ではあまり私から「教えない」ようにしています。教員の発言をメモしてそれを再現することに意味はありません。

 私が設定した問いに対して学生が意見を出し、さらに反対意見を募るというのが私の授業のやり方です。目的は、「正解」を学ぶことではありません。いろんな考え方が成り立ちうることこそ、学んでほしいと思っています。

藤野 若いうちから「思考」して、それを「実践」してみるのは大切ですね。僕のベンチャーファイナンスの授業も同じような考え方でやっています。最初は座学で知識や情報を教えますが、後半は学生が企業調査をして企業の成長要因や今後のリスクをまとめ、最後は調査した企業の社長の前でプレゼンするんです。

瀧本 社長の前で、学生がプレゼンですか。

藤野 はい、そうです。企業調査の方法やプレゼンの方法などは教えないので、学生たちは自分でやり方を考え、反省を次に生かしながら学んでいくことになります。

 瀧本さんのご著書にもありましたが、大事なのは答えを知ることではなく、自分で正しい問いを立てられることなんですよね

(次回は3月12日に更新予定です。)

取材・文/千葉はるか


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