今回は就活生・転職希望者必読! 投資は「いい会社」を選んで応援することが大事。つまりこの視点は就職や転職活動でも使える、と断言する、カリスマファンドマネジャーである藤野英人さん。人気ブロガーのちきりんさんの特別対談第4回は、若い世代に知ってもらいたい「今後の会社の選び方、働き方」について。日本人の多くが会社ギライなわけとは?
若者が「働くことの充足感」を
感じられない社会になっている
藤野 私は、明治大学でベンチャー・ファイナンスの授業をやっています。そこで感じることなんですが、日本の大学生は最近、すごく保守的になっていて、海外に出ていくどころか、ベンチャー企業や小さい企業よりも大企業に就職したい、さらには地方公務員になりたいという志向が強まっています。
その背景には、「会社嫌い」、さらには「労働嫌い」の思想が広まっていると思うんです。「働くことによる社会的な充足感」をすごく否定する雰囲気が広がっている。なるべく働かない方がいいという……。
ちきりん あら! それって私のことですか?(笑)
藤野 えっ、いやいや(笑)。だって、ちきりんさんは一所懸命働くことの価値を肯定しているじゃないですか。
僕が言っているのは、一所懸命働くことを是とする会社を、一律に「ブラック企業」とか呼ぶ風潮に対する疑問です。それは、「労働というのは、ストレスと時間とをお金に換えている」というような考え方であって、今、こうした労働に対するすごくネガティブな価値観が急速に広がっている気がするんです。
これって、ものすごく古びたマルクス主義じゃないですか。資本者家がいて、労働者を搾取しているという価値観。働くということは、時間とストレスの代償としてお金をもらうことだから、なるべく労働時間は少ないほうがいいし、残業はない方がいい。でも、そうした考えの人は、働くことの充足感があまりないんです。そして、彼らは変に理論武装していて、こちらが働くことの充足感を伝えようとすると、「資本主義をうまく働かせるために、そういう幻想を振りまこうとしているんだ」と反論してくる。
ちきりん たしかに、私も『蟹工船』が流行るとか、びっくりしました。彼らがまき散らしているのは、まさにマルクス主義的な「資本家と労働者は対立している」という階級闘争史観ですよね。
藤野 そう、そういう史観がすごく広がっている。たとえば、私のベンチャー・ファイナンスという授業は、明治の商学部の中でも意識が高い子が来ていると思います。なのに、その学生たちに最初にこの言葉のイメージを聞いたら、9割が、ベンチャー=ブラック、投資=ダーティ、だと。じゃあ、僕のやっているベンチャー・ファイナンスって、「ブラック・ダーティー」授業だ!って話ですよね(笑)。
ちきりん そんなイメージなんですか?? そこだけ聞くと、「じゃあなんで商学部に行くのよ」ってツッコミたくなりますね。
藤野 商学部ですらそうなんだから、法学部とか、文学部とか、理工学部の学生たちのベンチャー・ファイナンスに対するイメージなんて……絶望的ですよね。