動物愛護法違反の量刑は

 さて、週刊誌報道にある目に余る行為は複数あるが、本稿では特にペットの命に関わる点について着目したい。以下のようなケースはどうか。
 
〈疾患のある犬を健康とうたって販売し、その後生きるか死ぬかの疾患が判明しても治療費は負担しない。返金や同種のペットへの交換には対応する〉 

 これは、ペットが商品として扱われる以上、それがどれだけ悪質かは口惜しいながら加味されず、すごく嫌な言い方になるが「不良品をつかまされたか否か」という部分が争点になってくるであろう。ひとまず消費者センターに相談すべき類いだろう。
 
 しかし、その犬の販売前の飼育環境に問題があれば、動物愛護法に抵触するおそれがある。この例にのっとっていうと、繁殖場が、特定の昆虫やネズミがウジャウジャするなど劣悪という言葉では到底足らないくらいの地獄で、疾患がその環境由来であるなら、その犬を販売した企業は動物愛護法違反に問われてしかるべきである。
 
 令和に入ってから数回にわたって施行された改正動物愛護法では、販売業者に課されたマイクロチップ取り付けの義務化や動物取扱業への規制強化が行われた。動物をよりしっかり保護し、業者を厳しく取り締まる目的である。
 
 動物愛護法違反で有罪となった場合、動物を「みだりに殺したり傷つけた者」は最高で「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」が科せられる。「みだりに虐待した者」はやや軽く「100万円以下の罰金又は1年以下の懲役」である。これが法人の場合だと、5000万円以下の罰金が科される可能性もあるそうである。

動物虐待が立件されにくい現実

 法的な整備は心強いのだが、動物愛護法違反はなかなか事件化されにくいという現実もある。

 動物愛護法違反を見かけた際の相談窓口は一応、環境省のサイトに載せられていて、各都道府県に最低一つ以上はあるものの、それぞれ担当課の名前を見ていると「動物愛護課」などに混じって「くらしの安全課・食の安全安心担当」や「水道班」とあって、「動物の相談についてどのぐらい動いてくれるのかな…?」と思わず不安になるものもある。とはいえ、警察が介入しない・しにくい程度の案件も、行政が指導という形で介入してくれる可能性はあるので、ぜひ窓口に相談を寄せたいところではある。
 
 女優の杉本彩さんが代表を務める動物愛護団体が刑事告発を行って悪質なブリーダーが逮捕された案件では、「ブリーダー元従業員→獣医師→動物愛護団体→警察」という相談の流れで警察が動き、業者の逮捕に至った。事態を何とかしたいと願っていた獣医師は数年にわたって保健所や警察に訴え続けたが、取り合ってもらえなかったそうである。
 
 いずれにせよ日本には諸外国のアニマルポリスのような、動物虐待を取り締まる専門組織がないので、どうしても追及が甘くなりがちだ。
 
 警察との連携が強められている窓口には大阪府の「おおさかアニマルポリス#7122」や、兵庫県警察内に設置されている「アニマルポリス・ホットライン」などがある。自治体ごとに動物愛護法違反取り締まりへの意識・関心の高さが異なるようなので、全国で理不尽に苦しめられる愛護動物のためにも、決定的な新機軸の導入が期待される。