生体販売禁止が決まったフランス
さて、生体販売、つまりペットショップの店頭でペットを商品として販売するスタイルを禁止しよう――という意見を、冒頭のクーアンドリクの告発記事以降、よく目にするようになった。この考え方自体は目新しいものではなく、折に触れて主張されてきたが、にわかに熱が高まっているところを見ると告発記事によって問題意識が刺激された形である。
悪徳ブリーダーは利益のために犬猫に繁殖を行う。「繁殖場」と呼ぶより「生産工場」と称したほうがしっくりくるくらいの劣悪な環境で、犬猫を「生産」していく。なぜそのような業態が存続し続けうるかといえば、需要があり、かつ売ることのできる流通のシステムがあるからである。大量生産して売れ残りを里親に譲渡して、といった事業形態が許される……どころか非常に利益が上がるので、これをやる業者が後を絶たない。
もちろん、犬猫のことをきちんと考え、愛をもって繁殖させている優良ブリーダーもたくさんいるのだが、いかんせん悪徳ブリーダーが悪目立ちしており、ブリーダー全体の印象を著しく下げている。
ブリーダーの質をジャッジしやすくすべく、環境省は、従業員1人当たりの飼育頭数の上限や、飼育するケージの広さを定めた数値規制を2021年から導入した。しかし、今回の週刊誌報道を見る限り、残念ながら、まだうまく機能していないのが実情のようである。
生体を店頭で販売しているのは日本だけ、という言説をよく耳にする。正確には海外でも国や地域によって生体の店頭販売が行われているのだが、動物愛護先進国でのペットの主な入手方法は、たしかに「ペットショップで買う」ではなく、ブリーダー、シェルター(保護施設)の譲渡会、インターネットが主流となっている。動物愛護先進国では、生体への負担を鑑みて、販売のため店頭展示することがモラルに欠けると考えられるようである。
また、生体店頭販売の問題点は、衝動買い的な購入機会を増やしてしまうことにもある。ペットを飼う責任について十分検討されないまま行われる衝動買いは、飼い主がすぐに面倒を見きれなくなって手放す、あるいは最悪の場合遺棄や殺処分といった結末につながりやすい。また、ペットの衝動買い(需要)がパピーミル(悪質なブリーダー)を生じやすくさせている、といった指摘もある。
フランスでは、ペットショップで生体の展示販売を行ってきたが、2024年から生体の展示や、ペットショップでの犬や猫の販売、加えてインターネットでの一般人による犬猫の販売が禁止となる。フランスは半分以上の家庭がペットを飼うペット大国であると同時に、年間10万匹からの犬や猫が捨てられてもいて、この問題への対策という狙いでの新法案となる。
大統領の支持もありながら議会でほぼ全会一致で可決された法案だが、ペットショップからは不満の声も上がっているようである。
ひどい動物虐待を、即時厳しく取り締まる信頼感あるシステムが日本に備わっていないのはもどかしい。しかし、杉本彩さんの例に見られるように、民間から動いて事件化することも可能である。思うに、動物愛護法を管轄する環境省はもっと強気にやっていいので、我々一個人も彼らを後押しすべく、絶えず声を上げてその流れを作っていきたい。