「週単位」で考える
眠ることによって身体に必要なものを取り込もうというときに、多くの人は、「眠りを心配する」という壁に直面する。
疲れていないときや準備ができていないときにベッドに入るのは、数々の問題を引き起こすだけであり、真夜中に目が覚めてストレスがかかると、寝直すのもひと苦労だ。いったん心配ごとが気にかかり始めると、アドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンが分泌され、さらに頭が冴えてしまう。
普段は睡眠の悩みがない人でも、「安眠できない夜」がときどきやってくる。プレッシャーやストレスが原因のこともある。これは「週に1度だけ」とか、「月に2、3回」そうなるという人が多いようだ。
私は睡眠を「1晩に何時間」ではなく、「1週間に何サイクル」という単位でとらえている。すると、7日のうち1日くらい安眠できないことも、それほど悪くないように思えてくる。「1晩に8時間眠れた/眠れなかった」の二択ではないと考えると、たちどころにプレッシャーが消えてなくなる。
すべては今夜だけにかかっているのではない。1晩に5サイクルが必要な人は、「1週間に計35サイクル」が理想だと考えればいいのだ。
私は、指導するクライアントの予定を一緒に確認して、睡眠サイクルをいかに実現させるかについてアドバイスを行う。そのとき、1週間の予定を見たうえで、問題が発生しそうなエリアをマークする。
たとえば、あるサッカー選手には、週の真ん中にあるチャンピオンズリーグのアウェイでのナイトゲームが問題になることを指摘した。試合の終了は午後10時近くになり、その後はプレスインタビューがある。加えて、アドレナリンの分泌や移動も考慮に入れる。この日の晩は5サイクルを確保するのは無理なので、どのように補完するかを探るのだ。
注意点として、5サイクル未満を3晩続けることはなるべく避けること。少ないサイクルが1晩もしくは2晩続いたら、翌日は理想的なサイクルに戻すのだ。1週間のうち4日以上、理想のサイクルを組み込めたら合格だ。
何より大切なのは、自分自身が睡眠量を把握することだ。そうすれば、無理をしているかどうかが、目に見えてわかる。
1週間のうち、少ないサイクルの日が5日もあり、それが期間限定の特別体制ではないとしたら? さまざまな見直しが必要になるだろう。
「男に魚を1匹与えれば、1日食べさせられる。男に魚の釣り方を教えれば、一生食べさせられる」という格言があるが、それがまさに本書のアプローチの考え方だ。
クライアントと相談を終えてスケジュールを手わたすとき、私はこのような感じで伝えている。「このスケジュールなら、30サイクルを取ることが可能です。やるかやらないかは、あなた次第ですよ」
そこからは、本人のやる気にかかっている。