新人研修写真はイメージです Photo:PIXTA

新人に業務を教えるために、上司や先輩が、具体的に仕事の一部をやってみせて、その後新人に同じようにやらせる、という方法を取っている会社は多いと思います。ようやく任せられるくらいにまで育ったと思ったら、その新人が「この会社を辞めようと思っています」と相談してくる……そんな悲劇は避けたいもの。今回は、新人に業務を教え、育成していく上で、「やらされ感」をなくし、能動的に関わっていく人になってもらうためにはどんな点に注意したら良いかをお伝えします。(カスタマーズ・ファースト株式会社代表取締役・代表講師、産業カウンセラー 片桐あい)

OJTを行う際に、教える側が気付きづらい
「新人目線」とは

 どこの企業も人手不足で、猫の手も借りたいという状況なのではないでしょうか。育てても育てても、ある程度の作業を任せられるようになった時点で「実は……」と転職を切り出されるようなことも珍しくないと思います。

 OJT(編注:オンザジョブトレーニング、職場の上司や先輩が、実際の仕事を通して指導し、必要な知識や技術などを身に付けさせる指導法)を行う際、ついつい作業を教えることに精いっぱいになってしまうのも分かります。そして、それは人を育てて少しでも自分の仕事が楽になったらと思って教えてしまうからです。

 そもそも、作業というのは誰がやっても、同じプロセスで同じ結果になるように教えていく必要があります。それはそれで、仕事を覚えていく上では必要なことです。しかし、新人側の視点に立つと、

「同じような作業ばかりをやらされている。この会社にいる限り、自分はずっとこの仕事をやりつづけることになるのだろうか?」
「この作業で得られた経験は、他の部署や転職先でも使えるのだろうか?」

 などと不安に思うようになるのは、自然な思考ではないでしょうか。

 作業をするのは大事なことのはずなのに、なぜ新人は不安になるのか? それは、“今の作業と自分の未来のつながりが見えないから”です。そんなことは教えられなくても自分で考えるべきだ、と思われた方もいるでしょうが、最近はそれがなかなか難しいのです。

 今の世の中、ネットにはいろいろな情報があふれていて、何かを検索すれば、類似の情報が向こうからやってきます。それに慣れて育った若手にとっては、自分から情報を取りに行くこと自体が難しかったり、不要な行為に感じられたりします。さらには、自分の経験を棚卸しして、将来の自分の財産にしていくという、深い(時間もかかる)思考回路にならない場合の方が多くなります。