今、世界的に注目を集めているのがエピクテトスという奴隷出身の哲学者だ。生きづらさが増す現代において、彼が残した数々の言葉が「心がラクになる」「人生の助けになる」と支持を集めている。そのエピクテトスの残した言葉をマンガとともにわかりやすく紹介した『奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業』が日本でも話題だ。今回は、本書の中から、「”傷つけられた”と君が考えるとき、まさにその時点で君は実際に傷つけられたことになるのだ」というエピクテトスの言葉をマンガとともに紹介する。(マンガ©かおり&ゆかり)

人間関係に悩みやすい人は「偏った先入観」に捉われがち

セクストゥス・クラウディウス、エピクテトス、ニウス、ゼニムス。200人ほどの奴隷を所有するパトリキ。奴隷たちの怠慢な態度に頭を抱えていたところ、奴隷市場でエピクテトスを見つけ、見張り係として買う。
エピさん、さっき奥様に。ん? 小麦粉ひとつ買うのにどれだけ時間かかってんのよ!ったくのろいんだから! なにもあんな言い方しなくても。正直奥様とはもう顔もあわせたくありません。
ニウスよ。君にとって奥様は監督者でもあるな? そうですが。もし監督者がいなければどうなる。はい。奴隷たちの風紀は乱れますし、仕事も円滑にまわらなくなります。
そうであれば奥様は君にとって悪い面もあるが善い面もあると思わんかね? ニウスよ。人はつい悪い印象にひっぱられて善い印象が見えなくなってしまう。傷つけられたという偏った先入観で相手を見ている限り、いつまでも思い悩むのは君のほうなのじゃよ。

(本原稿は、『奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業』からの抜粋です)