史上最高値を更新したニューヨークダウ。3月5日の終値は1万4253.77ドルと、2007年10月につけたこれまでの最高値を5年5ヵ月ぶりに上回った。

 2月末までに新たな財政赤字削減案が与野党で合意されず、3月1日から強制歳出削減が発動され、これによりGDP(国内総生産)が0.5%前後押し下げられるとみられるにもかかわらず、株価が上昇を続ける背景には、米国景気の順調な回復がある 

 PER(株価収益率)が約14倍と前回の高値更新時の20倍前後と比べて割安なこともあり、上昇を続けるとの見方も少なくない。

 しかし、その先行きには意外な落とし穴がある。

 その端緒となるのが経済指標の歪み。08年9月のリーマンショック後の経済の落ち込みがあまりに大きく、一方、09年の春先以降、大型の景気対策による押し上げ効果があった。そのために09年以降、秋口から春先までにかけては景気の強さを示す経済指標が出やすく、春先から秋口にかけては弱さを表す指標が出やすくなるという歪みが生じた。それに引きずられる形で、景況感が改善、悪化するというパターンをこれまで繰り返してきた。

 今回も年末から年初にかけての強い経済指標を額面通りに受け取れない面があることは否めない。春先以降は弱い指標が出やすくなり、景況感が悪化しやすくなるだろう。

 また、景気の底堅さを表す指標が多い中で、景気回復ペースの鈍化を示唆するような指標が個人消費関連や生産関連で出ている。

 1月の小売売上高は、前月比0.1%増と3ヵ月連続の増加になったものの、11月0.3%増、12月0.5%増からは鈍化している。昨年末で打ち切られた給与税減税が影響しているとみられ、消費減速が懸念される。また、1月の鉱工業生産指数は前月比0.1%減だった。