重症化リスクのある人は要注意
薬剤費の負担が大きくなる
厚生労働省の試算によると、70歳未満(3割負担)の人がCOVID-19にかかって通院治療を受けた場合の医療費は、5月7日までは2590円、5月8日~9月末までは4170円、10月1日~2024年3月末までは1万2270円となっている。さらに、公的支援のなくなる2024年4月以降は、3万1570円になる見込みだ。
また、5類感染症への移行後は高齢者や妊婦であれば自宅での療養が難しい陽性者向けの宿泊療養施設を利用できていた。だが、これについても公的支援は9月末で完全に廃止された。
10月6日発表の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について」(厚生労働省)によると、9月25日~10月1日の1週間に報告された1医療機関当たりのCOVID-19の陽性者数は8.83人となっている。同じ期間のインフルエンザの発生状況は9.57人なので、ほぼ同水準といえる。
ただし、治療に使われる薬剤費は大きく異なる。たとえば、インフルエンザの治療に使われるタミフルカプセル75という抗ウイルス薬は、1カプセル当たり230.2円(2023年9月現在)。成人の1回の治療にかかる薬剤費は、約2300円なので、3割負担の人の自己負担額は700円程度だ。
だが、前述のように、COVID-19の治療薬の自己負担額(3割の場合)は、公費負担があっても9000円。公的支援のなくなる2024年4月以降は、約2万8000円になる。
COVID-19の治療薬が処方対象になっているのは、主に高齢者や基礎疾患のある人など、重症化リスクのある人だ。感染すると誰もが利用するわけではないが、重症化リスクが高まった場合は手痛い出費となりそうだ。
今後、COVID-19治療薬の市場での実勢価格が下がれば、徐々に国の薬価も下がっていくが、今しばらくは高価格が続くはずだ。
公的支援が段階的に縮小されている今、COVID-19の医療費は、一般家庭の家計に大きな影響を及ぼしそうだ。国の公費支援の見直し内容を踏まえつつ、今後の感染対策や医療費の準備方法についても考えておきたい。