新型コロナウイルスの5類移行に伴い、これまで特例的に国民健康保険加入者にも支払われてきた傷病手当金の給付も終了した。だが、実はコロナによる休職翌日から2年間は申請が可能だ。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第261回では、コロナ禍で生まれた画期的な制度だった、国民保険加入者への傷病手当金特例制度について詳しく見ていこう。(フリーライター 早川幸子)
国保加入の非正規労働者にも給付された傷病手当金
5月7日をもって終了したが、2年以内なら請求可能
コロナ禍にあった約3年間。国は、医療や雇用、住宅、就学など、暮らしを支えるさまざまな経済対策を行ってきた。医療分野における支援のなかで、特に画期的だったのが国民健康保険(国保)に加入している非正規雇用の労働者への傷病手当金の給付だ。
だが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置付けが、「5類感染症」に変更され、国からの就業制限がなくなったことを受けて、国保の傷病手当金の特例給付も5月7日をもって終了した。
ただし、入院などが長引いた場合は、5月8日以降も給付を受けられる可能性がある。また、給付の申請をし忘れていても、2年以内なら請求可能だ。請求漏れで損をしないように、国保の傷病手当金の特例給付について改めて確認しておこう。
傷病手当金は、公的医療保険(健康保険)の給付のひとつで、病気やケガで仕事を休んだ場合の所得保障だ。ただし、病気やケガで仕事を休んだ人すべてが、傷病手当金をもらえるわけではない。給付を受けられるかどうかは、加入している健康保険によって決まってくる。
公的医療保険制度は、大きく分けると(1)「職域保険(被用者保険)」と、(2)「地域保険」の2つで構成されている。
職域保険は、企業や団体などに雇用されている労働者が加入するものだ。雇用されて働く人を「被用者」というため、「被用者保険」とも呼ばれている。中小企業などの従業員が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」、大企業などの従業員が加入する「組合管掌健康保険(組合健保)」、公務員などが加入する「共済組合」、大型漁船などの乗組員のための「船員保険」などがある。
地域保険の代表格は、都道府県単位で運営されている「国民健康保険(国保)」だ。被用者保険に加入できない75歳未満の人の受け皿となっており、農業や漁業などの1次産業従事者、自営業者、無職の人などが対象だ。地域保険には、ほかにも、弁護士や美容師など特定の業種の個人事業主のための「国民健康保険組合(国保組合)」、75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」もある。
これまで、上記2つの公的医療保険のなかで、傷病手当金をもらえるのは、(1)の被用者保険に加入している人だけだった。
●国保加入者もコロナ禍で特例給付の対象に。これまで申請をしていなくても休職後2年以内なら過去の申請が可能