政府が旗を振る「異次元の少子化対策」。今後子どもの医療費助成の範囲がさらに拡充する中、気をつけたいのが不要な子ども向け医療保険に加入していないか、だ。貯蓄を目的にしておきながら不利な商品もあり、さらにそもそも今後の政府支援策を見ると不要となる内容のものもあるのだ。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第265回では、子どもの医療保険について見ていこう。(フリーライター 早川幸子)
子ども保険は本当に「おトク」なのか?
見直しのタイミングは今
先日、20代の友人から、「民間の子ども保険に加入するかどうか迷っている」と相談を受けた。
友人には、1歳の娘がいる。夫婦ともに正規雇用で働いているが、このところの物価上昇で家計が厳しくなり、貯蓄ができなくなっている。そこで、思い立ったのが、就職した時に加入した生命保険の見直しだ。
友人が加入しているのは、大手生命保険会社の医療特約付き定期保険と個人年金保険で、毎月3万円近い保険料を支払っている。担当の営業職員に「保険料を減らしたい」と相談したところ、加入中の保険を減額する代わりに、子ども保険への加入を勧められたのだ。
提案されたのは、子どもが18歳になった時に約150万円の満期金がもらえるほかに、親の死亡保障や子どもの医療保障などが付いているタイプだった。月払い保険料は約1万円。加入中の保険を減額することで、トータルでは現状とほぼ同じ月額保険料で子ども保険に加入できる。
「娘が18歳の時に150万円もらえるので、貯蓄の代わりになりますよね。医療保障も付いているから、病気やケガをしたときも安心だし、このプランに切り替えた方がいいのでしょうか」
たしかに、子ども保険を利用すれば、高校や大学などの入学に備える教育資金を用意することはできる。だが、すべての子ども保険が、教育資金を有利に貯められるわけではない。学資保険そのものは貯蓄商品として人気だが、医療保障と親の死亡保障などの育英年金の特約を付けると、返戻率が極端に低くなる事例もあるのだ。友人が勧められた子ども保険は、もらえる満期金が、払込保険料総額を下回ってしまう商品だった。
折しも政府が「異次元の少子化対策」を進めている中、「子ども保険」は本当に必要なのだろうか。次ページから詳しく見ていこう。
●今後子どもの医療費補助は拡大機運、ここをカバーする民間保険はほぼ不要