新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は小田急電鉄、京王電鉄、阪急阪神ホールディングスなどの私鉄5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)
私鉄5社増収
近鉄は2.4倍超の大増収
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の鉄道(私鉄)業界5社。対象期間は2023年2~6月期の四半期(5社の対象期間はいずれも23年4~6月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・小田急電鉄
増収率:9.9%(四半期の営業収益1005億円)
・京王電鉄
増収率:11.3%(四半期の営業収益888億円)
・東急
増収率:14.4%(四半期の営業収益2393億円)
・阪急阪神ホールディングス
増収率:7.2%(四半期の営業収益2455億円)
・近鉄グループホールディングス
増収率:113.4%(四半期の営業収益3995億円)
鉄道業界はコロナ禍の打撃を大きく受けたが、鉄道需要が回復してきた他、訪日外国人観光客(インバウンド)の回復によりホテル業なども好調で、私鉄5社全てが増収となった。
なお、同じ鉄道業界では、JR東海、JR東日本、JR西日本のJR3社も2桁増収している(詳細は本連載『JR東日本・JR西日本が「利益倍増」決算も…JR3社の真の業績回復度は?』参照)。
中でも近鉄グループホールディングスは、営業収益が前年同期の2倍を超える大幅な増収となったが、その要因は鉄道需要だけではない。
次ページ以降では各社の増収率の推移を紹介するとともに、コロナ前と比較して詳しく解説する。