新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は富士通、NTTデータなど「ITベンダー」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
富士通が「独り負け」の減収も
利益面は「減益&赤字」ラッシュ
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のITベンダー業界4社。対象期間は2023年2~6月の直近四半期(4社いずれも23年4~6月期)としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・富士通
増収率:マイナス2.3%(四半期の売上収益7996億円)
・NTTデータグループ(※)
増収率:49.8%(四半期の売上高1兆150億円)
・野村総合研究所
増収率:5.5%(四半期の売上収益1767億円)
・NEC
増収率:7.1%(四半期の売上収益7065億円)
※今回分析対象とした四半期からは外れるが、旧NTTデータは23年7月1日付で「NTTデータグループ」に社名を変更し、持ち株会社制に移行した。本稿では最新の社名を使用する。
ITベンダー4社は、富士通を除く3社が増収となった。中でもNTTデータグループの四半期増収率は約5割と突出している。
過去に本連載で解説してきた通り、このNTTデータグループの大幅増収は、NTTグループにおける海外事業の再編によるところが大きい。
NTTグループでは22年10月1日付で、旧NTTデータの海外事業と、海外でデータセンターやネットワークを手掛けるNTT Limitedを事業統合した。
今回分析対象とした23年4~6月期は、NTT Limitedをはじめとする複数の海外企業を傘下に収めたことによる新規連結効果が働いた。
そうした理由でNTTデータグループが大幅増収を果たした一方、富士通の四半期売上高は「独り負け」の減収となった。その裏側で何があったのか。
また実は、ITベンダー4社の利益面を見てみると、ある企業は営業赤字に転落し、純利益も約7割減となっていた。営業利益・純利益が「ダブル赤字」に陥っている企業もあった。残る2社も最終減益に沈むなど、4社そろって利益面で苦しんだ。
各社の利益を圧迫している要因は何なのか。次ページでは、各社の増収率の推移に加え、利益面についても詳しく解説する。