新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は花王、資生堂、ユニ・チャームの「生活用品」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
ユニ・チャームは増益も
花王・資生堂は大幅減益
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の生活用品業界3社。対象期間は2023年2~6月期の四半期(3社いずれも23年4~6月期)としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・花王
増収率:0.9%(四半期の売上高3907億円)
・資生堂
増収率:マイナス2.0%(四半期の売上高2542億円)
・ユニ・チャーム
増収率:7.3%(四半期の売上高2331億円)
生活用品3社の四半期増収率は、ユニ・チャームこそ前年同期比で約7%増と伸長したものの、花王は微増、資生堂は減収という結果だった。
さらに第2四半期累計(23年1~6月期)における利益面を見ると、花王と資生堂の苦戦ぶりが目立つ結果となっている。
何しろ、花王は営業利益が前年同期比で51.7%減、純利益が同57.3%減。資生堂は営業利益が同19.7%減、純利益が同27.7%減に沈んでいるのだ。
一方、ユニ・チャームは「コア営業利益」(※)が前年同期比6.0%増、純利益が同9.1%増と、こちらは堅調に推移した。
※売上総利益から販売費及び一般管理費(販管費)を除いた独自指標
これまで本連載で解説してきた通り、生活用品業界の「2強」といえる花王と資生堂は、新型コロナウイルス禍を機に日用品などの売れ行きが落ち込んだ。その中で、資生堂は21年7月に「TSUBAKI」「UNO」といった低価格帯の日用品ブランド事業を売却するなど、構造改革に力を入れてきた。
にもかかわらず、コロナ禍が落ち着いてきた今も、なぜ両社は苦戦が続いているのか。また、実は大幅減益に陥った2社だが、花王と資生堂の間には「大きな格差」が生じている。その正体とは何か。
次ページ以降では、各社の増収率の推移と併せて、花王・資生堂の業績について詳しく解説する。