コロナ禍明けてみれば、
誰もが盛り上がる共通の話題がなくなった
コロナ禍が落ち着き、社会が動き出してびっくりした。日々、本当にたくさんのイベントが行われている。スポーツだけを取っても、世界陸上、バスケW杯、アジア大会、そしてラグビーW杯……。毎日いろんな話題が瞬間的に盛り上がり、次の瞬間には別の話題に取って代わられていく。
もちろん、スポーツイベントなど、世の中にあまたあるイベントの一つであるからして、政治、経済、芸能、趣味のさまざまな出来事も起こる。そして、これもまた、一瞬だけ話題になっては次の話題にたちまち塗り替えられる。
さて、このような状況下にあって、結構困ることがある。人と人との間を取り持つ共通の話題を見つけるのが近年どんどん難しくなってきているのだ。
高校野球の甲子園で慶応義塾高校が優勝して、非常に盛り上がったようだったので、翌日の研修のまくらで話題に出してみたら、極めて反応が薄い。ほとんどの人が高校野球に興味はないので試合を見てないし、ワイドショーも見ていないから、「なんとか王子」などと言われてもわからない。「将棋の藤井八冠が」と話題を転じても、名前くらいは聞いたことがあるけども……といった程度の関心度である。ビッグモーターやジャニーズの事件もほとんどの人にとってはどうでも良いことで、何のことやら良く知らない。朝ドラのモデルの歌手・笠置シヅ子と言ってみても「???」という感じである。
一方で、自分の関心事については、SNS等で深く情報を集め、発信する。YouTubeもたくさん見る。スマホで見るニュースもサイトが自分向けにレコメンドしてセレクトしてくれているので、興味のないことには、ますます興味を持てなくなる。そもそも自分が選んで見たニュースをもとに次の表示が決まるわけだから、興味がないことはそのうち表示すらされなくなる。
もちろん、これらの現象は今に始まったことではないし、これまでも指摘されてきたことなのだが、新型コロナウイルスのまん延時においては、日本に住むほとんどの人がコロナとその影響が最大の関心事項であり、共通の話題になっていた。そのため、その間にも本当は進行していた個々人の関心事の分断、共通の話題の喪失という事態を(少なくとも私は)気付いていなかったのである。