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新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はNTT、ソフトバンク、KDDIの「通信」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

通信3社の1Q決算で
KDDIが「独り負け」の減収減益

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の通信業界3社。対象期間は2023年2~6月の直近四半期(3社いずれも23年4~6月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・NTT
 増収率:1.4%(四半期の営業収益3兆1111億円)
・ソフトバンク
 増収率:5.0%(四半期の売上高1兆4297億円)
・KDDI
 増収率:マイナス1.4%(四半期の売上高1兆3326億円)

 通信業界3社では、KDDIだけが四半期減収に沈んでいた。

 KDDIは3社の中で唯一、営業利益・純利益も「ダブル減益」に陥っており、まさしく「独り負け」といえる状況だ。

 それとは対照的に、NTTは「グローバル・ソリューション事業」(傘下のNTTデータグループが手掛けるITコンサルティング事業など)が好調で、営業収益・純利益が第1四半期実績として「過去最高」を更新した。

 そのNTTは今、「NTT法」の撤廃を訴えて他の通信事業者から猛反対に遭っている。NTTは、固定電話サービスを全国に提供することや、研究成果の公表などを義務付けるNTT法が、国際競争力の足かせになっていると主張している。

 これに対し、ソフトバンクやKDDIなどの競合他社は、同法の一部見直しには賛成するも、NTT法の廃止には「絶対反対」と強硬な姿勢を見せている。「完全民営化するなら、国から引き継いだ公共の資産を全て国に返還せよ」などといった論陣を張っている。

 過去には通信業界全体が「もうけ過ぎ批判」を受け、その流れの中で、携帯電話料金の値下げ要請を国に押し切られた経緯がある。そのため、NTT法撤廃の議論が本格化した今、NTTの過去最高決算が第2四半期以降も続けば、デリケートな話題になるリスクをはらんでいるかもしれない。

 一方、その政府による携帯電話料金値下げ要請を受けて21年に格安料金プランを導入した影響で、通信業界3社は通信料収入の減少が続いてきた。ただ、各社はその落ち込みを他事業の成長によってカバーし、NTTは11四半期連続、ソフトバンクは15四半期連続で増収をキープしている。

 その状況下で、KDDIだけが苦戦を強いられた要因は何なのか。

 次ページでは、各社の増収率の推移と併せて、KDDIの業績について詳しく解説する。