NTT法を巡る自民党と総務省の攻防が激化する中で、同法廃止に反対するKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルはNTTドコモとNTT東・西の統合に警戒を強める。NTTが保有するインフラ設備の分離案が説得力を増している。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
勢いを増している「NTT法廃止論」
「NTT法の在り方の議論を加速させて年内にも一定の方向性を見定めたい」。9月13日、第2次岸田再改造内閣の発足とともに自民党役員人事で再任された萩生田光一政務調査会長は、党として政府が保有するNTT株の売却と共に、NTT法の廃止を含めた検討を加速させる考えを表明した。
自民党がNTT法について議論するのは防衛財源の捻出が発端だ。政府はNTT株の34.25%、時価で約5.2兆円分を保有しているが、NTT法は政府が株式の3分の1以上を保有すると定めており、株放出には法改正が必要になる。
ここで焦点になったのが、1985年の旧電電公社の民営化に伴って導入されたNTT法そのものの見直しだ。
NTTは87年に上場してから2年後の89年に時価総額で世界一となったが、今や世界上位の常連はアップル、グーグル、マイクロソフトをはじめとする米IT企業だ。党内には「NTT法という時代遅れの規制でNTTは世界の競争に出遅れた。縛りを取り払って世界と勝負できる環境を整えるべきだ」との声が根強い。
萩生田氏は、防衛財源確保の特命委員会の下に「NTT法の在り方に関するプロジェクトチーム(PT)」を設置。座長を務める甘利明前幹事長は「PTの使命はNTT法廃止も含めた抜本的な見直しだ。財源問題は、その結果の一つでしかない」と述べ、防衛財源よりNTTの競争力強化を優先する意向を示した。
自民党のPTは8月22日から3回開催しており、11月にも提言をまとめる予定だ。萩生田氏の政調会長続投を受けて「NTT法廃止論」は一段と勢いを増している。
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