物理的な状態が劣悪なことが
老化を早める原因に?

 この結果は一見すると不可解かもしれないが、研究グループは理にかなっているとしている。少なくとも本研究が行われた英国では、社会住宅は民間賃貸住宅よりも維持管理が行き届いており、家賃が手頃で、安定しているという。

 Clair氏は、「一般的には民間賃貸住宅の方が物理的な状態が劣悪なことが、生物学的老化を早める一因と考えられる」と説明する。さらに同氏は、「民間賃貸住宅に住む人の方が、住宅に関して多くの不安を抱えている。過去の研究によれば、このようなストレスが生物学的老化を早める可能性がある」と付け加えている。

 今回の研究結果について、米ニューヨーク大学グロスマン医学部のGiselle Routhier氏は、住環境が健康に直接的、間接的に影響を及ぼすことは明らかだと話し、「剥がれた鉛含有ペンキやカビにさらされたり、ゴキブリが発生したりするなどの劣悪な環境に置かれることで、喘息などの健康問題が引き起こされる可能性がある。加えて、そのような環境で生活するストレスや、家賃を支払う余裕がない場合に医療機関受診をためらうことなどが、健康に悪影響を及ぼすこともあり得る」と説明する。

 また同氏は、米国における公営住宅が英国の社会住宅とは異なることを指摘。同様の研究が米国で行われた場合に、同じ結果が得られるとは限らないという。

 Routhier氏は、「安全で安心できる住まいがなければ、健康状態はもちろん、日常生活を管理することもとても難しくなる」と話し、「住宅不安の最も極端なホームレスの状態になると、一般的には高齢者に見られるフレイルや認知機能障害などが、通常より20年も早くに現れる可能性がある」と指摘する。

 Clair氏は、「重要なことは、安全性や質の低い住宅が、健康アウトカムの悪化と関連しているということだ」と述べ、住宅政策の重要性を強調している。(HealthDay News 2023年10月11日)

https://consumer.healthday.com/stress-and-health-2665814994.html

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