日銀YCC再柔軟化で“抜かずの宝刀”お蔵入り、「出口」抜けても続く非伝統的金融緩和11月8日、衆院財務金融委員会で答弁を行う植田和男日銀総裁 Photo:SANKEI

抜かずの宝刀はお蔵入り
さらなる柔軟化でYCCは骨抜き

 7月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の柔軟化に踏み切った日本銀行は、10月の会合でさらなる柔軟化を行った。

 7月の柔軟化では、連続指値オペで厳格に抑え込む10年物国債金利の上限を0.5%から1.0%に引き上げた。今回(10月)のさらなる柔軟化では、1.0%の利回りでの連続指値オペの運用を取り止め、1.0%を厳格な上限から機動的なオペで対応する上限の目途とした。

 また、7月の柔軟化では0.5%が変動幅の厳格な上限から変動幅の上限目途に変わった。これと同じことが今回のさらなる柔軟化で1.0%について起こったことになる。日銀は1.0%を超える10年金利の上昇を容認することになり、上限という表現が残っていても上限金利は事実上撤廃されたと考えることができる。

 これまでのような上限を厳格に守るという連続指値オペの運用は投機的な動きを招きやすく、指値オペによる日銀の国債大量購入が債券市場の機能不全をもたらす。こうした副作用に対する懸念が2度にわたる柔軟化の背景にある。

 7月の柔軟化では連続指値オペを発動する水準を、実勢を大きく上回る1%に設定することで連続指値オペを抜かずの宝刀にしようとしたが、その後の金利上昇で宝刀を抜く可能性が出てきたので、その前にお蔵入りさせてしまった。