仕事ができるようになりたいというのは、だれもが思うことであろう。だが、漠然とそう思うだけでは、いつまでたってもできるようにならない。仕事ができる人は、あるコツを身に付けているのだ。仕事ができる人が身に付けているコツとは? そして、仕事ができない人をできるように育てるには、どうしたらよいのだろうか?(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
仕事ができる人は身に付いている
「メタ認知」の重要性とは?
「メタ認知」というのは、聞き慣れない言葉かもしれない。だが、これは仕事でも勉強でもスポーツでも音楽でも、何かができるようになるために必須のものといえる。私は、『勉強ができる子は何が違うのか』という本の中で、メタ認知の重要性とその心理メカニズムを説明したが、それは仕事にもそのまま当てはまるので、ここで簡単に解説することにしたい。
自分自身の認知活動についての認知が、メタ認知である。仕事に関して言えば、「仕事をする」という認知活動を振り返り、その現状をモニターすることにより、問題点を把握し、改善すべき方法を考えるのがメタ認知の働きである。
たとえば、仕事の内容ややり方に関して、自分はちゃんと理解しているか、何か勘違いや理解不足の点はないか、望ましいやり方をしているか、などを振り返ってチェックする。仕事の成果に関しても、自分はちゃんと成果を出せているか、周囲の人の足を引っ張るようなことになっていないか、などを振り返ってチェックする。それがメタ認知の働きである。
仕事ができる人は、こうしたメタ認知ができているため、理解不足の点があればそれに気付くことができるし、仕事のやり方にまずい点があればそれに気付くことができる。周囲を納得させる成果を出せていなければ、出せていないということに気付く。
そのような自分の現状の問題点に気付くことができれば、どうすべきかを考え、知識を増やしたり、仕事への理解を深めたり、仕事のやり方を工夫したりして、仕事力を高めることができる。