心理学者のデルクロスとハリントンは、メタ認知的モニタリングの能力向上のためのトレーニングを行っている。そこでは、「問題を注意深く読んだか」「問題を解くための手がかりは見つかったか」など、問題そのものやその解法についてじっくり考えるように導く質問を行い、また何点くらい取れたかを尋ねた。すると、こうしたトレーニングを受けたグループは、受けなかったグループと比べて、成績が向上することが示された。
このような結果は、メタ認知を促すトレーニングによって、問題をめぐってじっくり考える姿勢が促され、同時に自分の理解度に関してもじっくり振り返る姿勢が促されたと解釈することができる。「分かったつもり」を防ぎ、成績の向上を目指すには、勉強しているときの姿勢や問題を解いているときの姿勢を振り返るように心がけるのが有効だと分かる。
今回紹介したのは学習活動に関する実験によって得られた知見だが、それはそのまま仕事活動にも当てはまる。このように自分の仕事ぶりをたえず振り返りチェックするように導くような仕組みをつくることにより、メタ認知を常に機能させる心の習慣が身に付けば、日頃の自分の仕事の仕方のクセに気付くことができるし、そこに改善すべき点があれば、それに気付くことができるようになるのだ。