しかも、この期間のうちに、老化をともないながら、親の健康状態は悪化していくのが普通です。はじめは半身不随などの身体的な問題だったところに、認知症(重度化すると意思の疎通ができなくなる)も重なってきたりします。

 仕事を辞め年収が半分になって10年も経つと、ビジネスケアラーとして働き続けた場合からは想像もできないほどの貧困になります。

 さらに今後の日本は、物価高になっていくと予想されています。いつ終わるともしれない介護に悩まされながら金銭的にも厳しくなると、精神的な余裕がなくなり、虐待にもつながることもあります。

 あなたの親は、自分の愛する子どもが、自分の介護のせいで、そうした状態になることを本当に望んでいるでしょうか。

介護の負担額は平均月7、8万円
介護期間の見積もりは平均14年

 金銭的な話をすると「うちの親にはそれなりに資産があるから大丈夫」と考える人もいるかもしれません。しかしそれは、本当でしょうか。先回りしておきますが、介護には相当なお金がかかり、仮に資産が十分にあったとしても、大丈夫ではありません。

 そもそも、介護にかかるお金(介護保険でカバーされない自己負担部分)がいくらくらいになるのか、誰もが不安に思っているでしょう。

 これを実際のデータで見ると、バリアフリー化や介護ベッド、緊急対応の交通費や宿泊費といった初期費用(一時費用/自己負担)としてかかっているのは、平均で80万~90万円程度でした(この数字はバラツキが大きいため注意も必要です)。また、毎月かかっている費用(自己負担)は、平均で7万~8万円程度になります。

 脅しではなく、日本の社会保障は、少子高齢化と税収の低迷を受けて、劣化していくでしょう。ですから、このような介護にかかるお金の平均もまた、今後、必ず上がっていきます。そのうえ、おそらくは物価も上がっていくことになるのです。

 冷静に考えれば、これからの介護の費用が実質的に上がっていくことは、想定に入れておく必要があることがわかるでしょう。

 それでは実際に、介護をしている人々は、どう考えているのでしょう。