電気代やガス代、ガソリン代などが高止まりし、企業の財務も家計の懐も圧迫している。この状況で参考にしたいのが、「経営の神様」と評された稲盛和夫氏のコスト削減術だ。「ちりも積もれば山となる」レベルの節約から、大型投資による10億円単位の経費削減まで、強い意志と戦略でコストを切り詰めることこそ、稲盛流経営の真骨頂だったからだ。では、これを家計に応用するとどうなるのかについても考えてみたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)
日本列島各地で迫られる
燃料費の高騰を巡るシビアな経営判断
急激な円安、ウクライナ危機に加え、イスラエルのガザ攻撃に伴う中東危機から、燃料費の高止まりが続きそうだ。燃料費の高騰は、日本中の企業に大きな影響を与えている。
企業の取るべき方策は、燃料費を削るか、価格に転嫁するかだ。例えば、日本経済新聞(11月7日)では、『商品市場動乱2「燃料補助金もうやめて」』と題して、次のように報じている。
《トマトの価格が高騰するなか、埼玉県桶川市で農園を営む手島孝明は「価格転嫁しても商品を売り抜く力が必要だ」と語る》
《屋外の気温が下がる12月から3月にかけて、600坪のビニールハウスに使う暖房用の重油の使用量は7500リットルほどにも上る》
《重油代を抑えるために室内の設定温度を下げればトマトの品質に影響を及ぼしかねない。手島は「無理して価格を据え置くよりも消費者が求めるクオリティーを追求する」という》
このようなシビアな企業判断が、列島各地で求められるということだ。
戦後のオイルショックなどを経験していない私たちの世代にとって、燃料費がここまで高止まりすることを想定していた人は少なかったかもしれない。燃料費や水道光熱費は何となく「結構かかるなあ」と感じていても、しょうがないものだと放っておいた人も多かったのではないだろうか。
「経営の神様」稲盛和夫氏は
コストに無頓着な経営に警鐘を鳴らしてきた
「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏は、そうした人と同じようにコストをあまり考えずに経営する風潮に早くから警鐘を鳴らしていた。