あの「経営の神様」と称される稲盛和夫氏が、中国出張の際に露店で売られている焼き栗を「もっと安くならないか」とさんざん値切り倒したというエピソードがある。その上、結局、悩みに悩んで買わなかったという。焼き栗は日本円で1袋20~30円程度。普通に考えたら20円で悩んでいる時間の方が惜しい人物のはず。なぜ稲盛氏はそんなことをしたのか?(イトモス研究所所長 小倉健一)
「経営の神様」稲盛和夫氏が
20円の栗を値切り倒して結局買わず
あなたは買い物の際、モノの値段を値切ったことがあるだろうか。初めから「交渉次第」で価格が決まることが前提のフリーマーケットならいざ知らず、通常は売り手の言い値で買うことが当たり前になっているのではないだろうか。
「店先で値切るなんて、何だか貧乏くさいんじゃないか」
「値切ったって大して値段は変わらない。それなら最初から、言い値で買った方が時間の無駄にならない」
「そもそも、『値切る』という発想がない」
そんな声も聞こえてきそうだ。
ところが、あの「経営の神様」と称される稲盛和夫氏が、中国出張の際に露店で売られている焼き栗を「もっと安くならないか」とさんざん値切り倒したというエピソードがある。その上、結局、悩みに悩んで買わなかったという。
焼き栗は日本円で1袋20~30円程度。普通なら「値切らず、パッと買ってしまったって問題ない額だ」と思うに違いない。
なにせ京セラの創業者で「経営の神様」の稲盛氏である。保有資産額は840億円とも報じられ(フォーブス「日本長者番付」2017)、公益財団法人の設立に200億円近い私財を投じたり、母校の鹿児島大学に個人資産から京セラ株80億円相当を寄付したりするなど、100億円近い金額をポーンと出してしまう人物だ。普通に考えたら20円で悩んでいる時間の方が惜しいはずだ。
それでも稲盛氏が、焼き栗を値切り倒して結局買わなかった理由とは何だったのか。