「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏の訃報が流れた。稲盛氏の経営塾で学んだ経営者は数多く、また多くのビジネスパーソンにとって教訓となる同氏の経営哲学には事欠かない。そこで今回は、重要な接待の場面で吉野家の牛丼を選ぶという、凡人には計り知れない「稲盛哲学」の神髄をご紹介したい。(イトモス研究所所長 小倉健一)
「経営の神様」と呼ばれた
稲盛和夫氏の帝王学とは?
人の上に立つとは、どんなカリスマ性が必要なのか。リーダーとは何か。リーダーはいかにあるべきか。
稲盛和夫氏がビジネス人生において考え抜いてきたこと、悩み抜いたことが「帝王学」であろう。
国際教育評論家・村田学氏の言葉を借りれば「帝王学とは、伝統のある家系・家柄などにおいて、特別な立場にある人が、その立場にふさわしい能力を養うために学ぶ全人格的な教育」のことである。今回は、「経営の神様」ともいわれ、戦後を代表する経営者・稲盛和夫氏の「帝王学」について述べたい。
稲盛和夫氏と食事をしたことのある人物は、皆驚く。信じられないぐらいに庶民的なお店ばかりを選ぶからだ。私は、経済誌「プレジデント」の編集部員・編集長として、稲盛和夫氏に何度もインタビューし、また周辺への取材を繰り返すうちに、億万長者でもある稲盛氏がこんな店に入っているのかと驚いていた。